「伴侶は5人」「薬物で5回逮捕」 奇才・川添象郎さんの次男が明かした秘話 「細野晴臣さんに譲ったギターの音色を最期に聞かせてあげようと」
2度の実刑判決
改めて大嗣氏に聞くと、
「療養に専念するためには、陽子夫人の実家がある白河市のほうが、都合が良かったのだと思います」
これには少々、解説が要るだろう。私生活の奔放さでも世間の耳目を集めた象郎氏は、薬物事件で5回、1997年には監禁暴行容疑で逮捕、起訴され、実質2度の実刑判決を受けた。
スキャンダルには事欠かず、自らの半生をつづった『象の記憶』によれば、生涯に伴侶は5人もいたという。3人目の妻となった風吹ジュンとの間に1男1女を儲けたが、象郎氏の不倫で92年に離婚。4人目の妻は林真理子氏の小説『アッコちゃんの時代』のモデルになった小出明子氏で、大嗣氏の母にあたる。
再び大嗣氏が言うには、
「父と別れた後も連絡を取っていた私の母は“大往生だから皆で弔ってあげよう”というスタンスです。喪主は陽子夫人が務めましたが、この20年間、父が刑務所に入っても辛抱強く待ち続け、出所後には“お帰り”と出迎えて共に暮らしてきただけに、相当なショックを受けています」
“本当の伴侶”と語っていたギター
今回の訃報に接した陽子夫人は、真っ先に大嗣氏に電話をかけてきたそうで、
「“最初にひろ君へ伝えるけど、パパが亡くなっちゃったの”と言われて……。翌日、細野晴臣さんからギターを借り、福島へ向かいました」(同)
それは世界に数本しかない62年製の「アルカンヘル・フェルナンデス」なるフラメンコギターの名器。元々は象郎氏が所有していたとのことで、大嗣氏が続ける。
「荒井由実時代のユーミンに『あの日にかえりたい』という曲がありますが、そのレコーディングで細野さんが弾いたギターです。父は生前、そのギターは“どの奥さんよりも長く連れ添ってきた本当の伴侶だ”なんて冗談を飛ばしていましたが、晩年は弾いてあげないと楽器がかわいそうだからと細野さんに譲った。破天荒な人物だと世間から認識されているきらいがありますが、息子からみると彼はアーティストです。細野さんもそのように仰って僕にギターを貸してくれました。どうしても父にギターの音色を聞かせてあげたい。そう思って持参したのです」
息子の奏でるレクイエムを、草葉の陰で象郎氏はどう聞いただろうか。