総裁選の「決選投票」は“民意”を反映できるか キングメーカーが暗躍し、派閥の論理がモノを言えば「何も変わらない自民党」が露呈

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イギリスは民意最優先の党首選

 まず保守党の場合、党首選の候補者が3人以上の場合、下院議員の投票で候補者が2人に絞り込まれる。そして党員投票の勝者が新党首に選ばれる。自民党の総裁選とは正反対になっているのが興味深い。

 労働党は1回の党員投票だけで新党首が決まる。候補者が何人いても、得票数がトップの者が勝利するルールだ(註2)。

 実際、自民党も決選投票で党員票の割合を増やしたのだ。2012年の総裁選では石破茂氏が199票でトップ、第2位は安倍晋三氏で141票。石破氏は過半数に達しなかったため、決選投票が行われた。

 1回目の投票で、石破氏の国会議員票は34票しかなく、安倍氏は54票だった。この時の決選投票は国会議員しか投票できず、国会議員の支持を集めた安倍氏が逆転勝利。この結果に自民党の地方組織から不満の声が出たため、都道府県票の制度が取り入れられた。

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は「どんな決選投票になるのか、まさに自民党の国会議員の見識が問われています」と言う。

「党員票を多く獲得した候補は、1回目の投票でトップか2位となり、決選投票に進出する可能性が高いでしょう。そして決選投票で党員票が少ない候補者が勝利した場合、国会議員は民意を無視したと指摘せざるを得ません。2012年の総裁選でも石破さんが党員の支持を受け圧勝したにもかかわらず、決選投票では国会議員が内輪の論理を優先し、安倍さんが勝利しました。同じことを今回も繰り返すとなると、それこそ自民党は何十年も変わっていないと国民にアピールすることになってしまいます」

私利私欲の国会議員

 自民党の総裁選は“メディアジャック”に成功し、大手新聞社とテレビ局は国民が裏金事件を忘れさせることに手を貸した──こう伊藤氏は指摘する。

「にもかかわらず、決選投票で党員票をひっくり返した場合、国会議員の見識は党員より劣るということを如実に示したことになります。実際、『首相にふさわしい見識を持った政治家を総裁に選ぼう』と考えている自民党の国会議員は少数派でしょう。かなりの議員が『自分の選挙に有利な新総裁は誰か』や『どんなポストをもらえるか』という私利私欲で動いています。今回の決選投票で自民党の国会議員がどのような“見識”に基づいて投票を行うのか、非常に注目すべきポイントだと思います」(同・伊藤氏)

註1:あす投開票 自民総裁選、議員票争奪戦が激化 森元首相は小泉氏支持を呼びかけ(日テレNEWS:9月26日)

註2:「保守vs.リベラル」はもう古い? 日本政治の対立軸(原英史氏の署名原稿:月刊『正論』10月号 連載「暴走する新聞報道」)

デイリー新潮編集部

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