「おにぎりを買いに来てギガ回復」もいいけど…「未来のコンビニ」に必要なもっと本質的なこと

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どれだけ仕組みが優れていても…

 こうした取り組みでローソンが目指すのは「リアル小売ビジネスをトランスフォームする“グローバルリアルテックコンビニエンス”」という未来像だ。これ自体には私としても期待大だが、コンビニは小売業である以上、どれだけ仕組みが優れていても、良い商品の品揃えがなければ、誰も買わないという大原則を忘れてはならない。

 50周年を迎える日本のコンビニの歴史を振り返ると、前半の25年で、今の日本式コンビニの大枠はほぼ完成してしまったといえる。直近の25年では、おにぎりやスイーツ、カウンターファストフードなどが進化し、高付加価値商品の単価アップが売上を支えてきた。

 特に、メーカーとの協業を含めたプライベートブランド商品を中心とする、自社開発商品が売り場の大半を占めるようになったことがその象徴だ。1998年以降は税制改正による6回のタバコ料金の値上げもコンビニの売上を支えており、タバコの売上が全体の約4分の1を占めるまでになってしまっている。

 未来のコンビニ像を考えるうえで「良い商品」とは何か。私は、今後、コンビニには“できたて”の中食(持ち帰りの弁当類)がますます求められると考えられている。最近、セブン-イレブンが店内で揚げるドーナツの取り組みをはじめたが、これもできたて需要を見越したものだと考えている(詳細は別記事「“ミスド”を目指すとまた失敗する… セブンはなぜ「ドーナツ」に再挑戦するのか」を参照)。

 超高齢化で人口減が続く中、ローソンに限らずコンビニ全体では、年間来店客数が減少している。コロナ前の2019年の年間来店客数は174億5,871万人だったが、2023年は161億8,136万人とおよそ13億人の顧客が減少する厳しい状況が続いているのだ(参考:日本フランチャイズチェーン協会)。中食、とくにできたてのものを拡充させ、高齢者らの来店を増やせるかが、これを打破するひとつのポイントでもある。

まちかど厨房という武器

 今回のローソンの会見では、主旨と異なるためか、中食に触れられることはほとんどなかった。だが、全国の約9,300店舗のローソンには、店内調理した弁当やおにぎり、サンドイッチなどを提供するブランド「まちかど厨房」がある。厨房が設置された小売店という視点で見れば、ローソンは国内最大規模の店舗数を誇る。今後、さらに“まちかど厨房”を拡充することで、厨房の数で勝るローソンは他社よりも優位に立てる。現在のところ、調理方法としては「揚げる」が主流だが、KDDIとのタッグによってIoTを活用し、揚げる以外の調理も期待できそうである。

 ローソンが打ち出した、グローバルリアルテックコンビニエンスは、50年経過したコンビニが、今後100年に続くための新たなチャレンジが詰まっていた。同時に、商売人としてのリアルの接客、そして基本的な商品開発も、コンビニの次なる50年のためには重要になるだろう。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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