母は声を上げて泣き、父は涙を堪えて我が子を…「中国10歳男児刺殺事件」日本人学校保護者が語る「お別れ会」の悲嘆

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 9月18日午前8時頃、中国広東省深セン市の日本人学校に通う日本人男児(10)が母親に付き添われて登校中、中国人の男(44)に腹部などを刺され救急搬送された。男児は翌日未明に死亡。中国当局が犯人の動機などを未だ明らかにしていない中、現地では男児のお別れ会が開かれた。

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 23日午後、会場には日本人学校の児童や保護者ら100人ほどが集まったという。参列した日本人男性が語る。

「亡くなった児童の母親と祖母は声を上げて泣いていました。一方で父親は涙を堪えて我が子を送り出そうとしている姿が印象的で、同じ父親として涙が止まりませんでした。棺の中で児童は安らかに眠っているようでしたが、どれだけ痛い思いをしたのかと思うと本当に犯人が許せません」

 参列した児童たちも涙を流していたという。

「控え室では友達と談笑している児童の姿も見られたのですが、いざ献花となり、亡くなった男児を目の当たりにすると、涙を流し、感情が抑えられなくなった子もいました」

 まだ10歳の友達がいなくなってしまったのだから、そのショックは計り知れない。

 事件が起きた深センは、中国が改革・開放路線に舵を切った1980年に“経済特区”に指定され、外国企業の投資を積極的に受け入れることで発展した。

 現在では“中国のシリコンバレー”と呼ばれ、スマートホンやパソコンなどを展開するファーウェイ、長澤まさみをCMに起用したEVメーカーのBYD、日本のファミレスなどでも使用されている配膳ロボットメーカーのプードゥ・ロボティクスなどが本社を置いている。グループチャットのWeChatなどを提供する巨大企業・テンセントは租税回避のため登記上はイギリス領のケイマン諸島に本社を置くが、実質的な本拠地は深センだ。

街中に防犯カメラ

 日系企業も電子部品メーカーを中心に進出しており、外務省によると深センに暮らす在留邦人数は3600人(昨年10月)と推計されている。今年4月より同地に赴任した日本人男性は言う。

「深センの街中には至るところに防犯カメラがあり、WeChatの情報も政府に全て筒抜けです。治安が良いと言うよりも、犯罪そのものが抑制されている印象ですね」

 抑制された“犯罪欲”が、中国の言うところの“国辱の日(9月18日)”に開放されたのだろうか。

「深センに赴任して半年になりますが、中国人の方は老人や子供に対して本当に親切です。ですから、なおさら今回の事件が許せません」

 事件をいつ知ったのだろう。

「事件後すぐにWeChatで知りました。深センに住む日本人は中国の他の都市に比べると多くはないので、それだけに結びつきは強い。だいたい同じマンションの住民で構成された日本人グループがあり、そこに情報が流れてきました。当日、私の会社にいた中国人に聞いたところ、事件を知っている人と知らない人が半々くらいでした」

 深センに暮らしている日本人は今どう思っているのだろう。

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