「原油安」「円高」でもガソリン“高止まり”ナゼ? 6兆円を超える補助金の行方は

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 為替がついに1ドル140円を切った。海の向こうでは原油価格もウクライナ侵攻の頃から大きく下げている。なのに、道端に掲げられているガソリンの値段はいまだに高い。

 経産省の担当記者が解説する。

「原油の高騰を受けて、国がガソリンなどに補助金(燃料油価格激変緩和補助金)を出し始めたのは2022年1月のことでした。その頃の原油は今の値段より少し高かった。当時ガソリン代は1リットル170円前後。この価格を基にして、多い時で1リットルあたり40円以上の補助金が出されていました。それがないと仮定した場合、1リットル215円もの値段になった時期があります。最近は減ってきていますが、それでも1リットルあたり12.6円が補助されている。つまり、補助金でガソリン価格を抑制している状態は続いているのです」

補助金があっても価格が下がらないワケ

 レギュラーガソリンの平均小売価格は、現在1リットル174.5円で2年前よりやや高め。補助金があるのだからもっと下げてもいいはずだが、日本エネルギー経済研究所の「石油情報センター」に聞いてみると、

「日本で使われるガソリンは、ドバイやオマーンから積み出される原油を日本に持ってきて精製したものがほとんどです。その際の取引条件を“FOB”と呼ぶのですが、基本は米ドルでの取引。それを円に替えたものが日本に持ち込んだ際の原油価格になるのです。しかし、そもそも2年前は今より円高傾向(1ドル平均130円前後)でした。だから、当時より原油が高くなっているわけで、そのぶんガソリンが高止まりするのは仕方ありません」

 また、大手石油元売り会社の担当者が言う。

「原油は中東から日本に持ってくるまで20日以上かかります。そこに精製する時間もかかる。いま売られているガソリンの価格は1カ月前の原油の値段が基になっているわけです。また、最近では人件費などの値上がりも続いており、それがガソリン価格に影響していると思われます」

 決して、石油会社が大儲けしているわけではないと言うのだが、自動車評論家の国沢光宏氏が指摘する。

「原油やドルが上がると、ガソリンはすぐに値上げする。ところが、円高に転じたり、原油安になってもガソリン代はなかなか下がりません。それを言うのなら、そのタイムラグの違いをどう説明するのでしょうか」

 燃油の補助金予算はこれまで6兆円を超える。本当に“補助”に使われていればいいのだが。

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