「登山料10万円」も検討すべし…「富士山」に入山規制導入も効果ナシ 専門家が語る本当に有効な「オーバーツーリズム対策」とは

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とるべき対策

 このように、それまで全く注目されていなかったような場所がSNSの影響によって一気に観光地化した場合、地元の対応が追い付かず、京都や鎌倉といった世界的に有名な観光地と同様のオーバーツーリズムの問題にさらされることになる。

 観光客が増加することによる経済効果への期待が大きいことは十分に理解できる。しかし、それは地元の人々がより「豊かな」生活が送れるようになることが前提である。オーバーツーリズムが発生してしまうと、地元の人々の日常生活に支障をきたすことになり、それは持続的なものとはなりえない。

 では、富士山の問題に関して言えば、どう対応していくべきなのか。

 まず、先にも述べた通り、特に海外からの観光客に対して、富士登山はリスクを伴うものであるという啓発活動を行うことが重要である。せっかく日本に着たのだから、ついでに有名な富士山にも登ってみようという安易な発想をさせないようにする必要がある。

 また、安すぎる登山料も再考すべきだ。この円安下では3000円という登山料(通行料2,000円と、環境整備の協力金1,000円の合計)はまったく登山を思いとどまらせるようなものとはならない。そもそも、昼食などに1万円程度を払う海外からの旅行者は極めて多い。このことは、我々自身に振り返って考えてみてもそうであろう。めったに訪れることのないような場所を訪れた場合、少々高めの料金であろうと、せっかくの機会だからといってそれを支払う心理が容易に理解できるはずだ。その心理を押しとどめるためには相当に高い料金を設定する必要があるのである。

 たとえば、日本人と外国人観光客との間に二重料金制を設けることも考えられるだろう。誰もが格安で登頂できてしまう「世界遺産」は、世界的にも富士山くらいである。エベレストが175万円、北米最高峰のデナリは7万円を課していることを鑑みても、富士山も10万円くらいの登山料は設定してもいいのではないだろうか。

戸崎肇(とざきはじめ)
桜美林大学航空マネジメント学群教授。1963年生まれ。京都大学経済学部卒。日本航空での勤務を経て、帝京大学、明治大学、早稲田大学、東京都立大学などで教鞭をとり、2019年より現職。著書に『ビジネスジェットから見る現代航空政策論』(晃洋書房/2021年)、『観光立国論 交通政策から見た観光大国への論点』(現代書館/2017年)など。

デイリー新潮編集部

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