繁華街の居酒屋に「愛想の悪い日本人店員」が増加中…そんな「サービスの劣化」を歓迎すべき理由

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 また、接客の無愛想化が進んだのには、QRコード読み取り、スマホから注文するスタイルが普及したことも、影響しているのではないだろうか。何せ、席に案内し、「QRコードでの注文お願いします」と無表情で言うだけであとはコミュニケーションが不要となる。飲み物とおしぼりとお通しを運び、追加の注文がQRコード注文で入ったらそれを運ぶだけでいい。店員とのコミュニケーションが激減したことから、無愛想な店員でも仕事が成り立つ。

 と、ここまで日本の接客の変化を論じてきたが、そもそも、日本人の接客が良すぎたのだと思う。例えば、アメリカのマクドナルドでは、並んでいて、自分の番になった瞬間、ぼうっとしていると、イライラした口調で「Next!」と怒られる。私がバニラシェイクを頼んでいるのに発音が悪かったのか「We don’t have banana shake!」と怒られたことも。おどおどとしていると店員の怒りは頂点に達し、「Next!」と叫び、次の客を呼び入れてしまうのである。

日本もようやくここまで

 飛行機の機内でも、日本では飲み物の配膳サービスの際、「どちらになさいますか?」とCAから笑顔で聞かれる。が、外資系の飛行機だとこれまた怒ったように「Coffee or Tea!」と言われ、「あっあっ、コーヒーでお願いします」と委縮しながら言ってしまうもの。

 今後はグローバルスタンダードの「愛想の悪い接客」も受け入れるべきではなかろうか。愛想の良い接客が好きな人はその店に行けばいいし、気にしない人は愛想の悪い、でも安い店に行けばいい。今回の渋谷滞在で「日本もようやくここまで来たか…」と思ったのである。

 なおこの“飲食店のサービス内容の変化”については「飲食店従業員のサービスの質が5年前と比べてどうでしょうか?」といった大規模調査があるわけではないため、エビデンスはなくあくまでも私の実感だけである。読者諸兄に置かれては、渋谷界隈の居酒屋に行かれた際は、是非ともこの変化について、実感していただきたい。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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