妻で満たせない「特別な欲望」は年下の女性と…「浮気ではない」と言い張る44歳夫の選択と代償

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【前後編の後編/前編を読む】大学時代に観た映画で「特殊な趣味」に目覚め…44歳夫は劣等感を抱き続けた 隠されていた出生の秘密

 鶴野晴也さん(44歳・仮名=以下同)は、大学時代に観た映画をきっかけにSMの趣味に目覚めた。しかし、自らの性癖に戸惑い、その欲望を封印。学生時代に恋愛に失敗し、社会に出てからも劣等感に苦しみ続けたという。さらに、成人後に両親が離婚したことで、自分は母の浮気によって産まれた子ということを知る。30歳で同い年の麻由美さんと結婚したが、そんな家族の秘密は話せないでいた。

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 結婚してから半年過ぎても、晴也さんは麻由美さんと関係をもたなかった。麻由美さんも忙しく仕事をしていたので、新婚当初、誘い損なってからずっと誘えないままだったのだ。ふたりでドライブ旅行に出かけたこともあるのに、彼は運転疲れでホテルに着くやいなや眠り込んでしまった。

「さすがに麻由美もイライラが募ったんでしょう。半年過ぎたころに『私はあなたにとって性的な魅力がないのかな』と言いだした。そんなことないよとしようとしたけどできなかった。彼女は子どもがほしいのにと泣いていました。僕は麻由美を好きだよ、悪いのは僕なんだと言いながら涙がこぼれました」

 機能に問題があるというより精神的に緊張するんだと言い訳をして、3ヶ月ほど彼はがんばった。麻由美さんの献身的な協力があってようやくできるようになったとき、心からほっとしたという。

 その1回で妻は妊娠し、晴也さんは「義務」から解き放たれた。彼はセックスそのものが好きではないと確信した。妻のことは愛しているのに、セックスをともなう関係からは解放されたいと願った。

僕もオヤジのように…と疑いつつ

 妊娠中は「怖くてできない」と妻に言い続け、娘が産まれてからは心身ともに疲弊していた麻由美さんのほうが欲求を見せなくなった。そのままずるずるとレスが続き、ふたりの間では暗黙のうちに「しなくていい」ということになっていった。と、晴也さんは言うが、果たして妻は本当にそう思っていたかどうかわからない。言っても無駄だと思っていたのかもしれない。

「娘が1歳になる前に保育園があいたので、妻は仕事に復帰しました。協力しあって育児をし、家庭はそれなりにうまくいっていたと思います。でも、たまたま定時で仕事を終えたので、今日は僕が行くよと妻にメールをしてから保育園に行ったら、先生が『今日は延長ということになっていますけど、いいんですか』と。そんなことが何度かあったんですよ。残業の予定があったのかと聞いたら、ごにょごにょとごまかされて……。そのとき、もしかしたら娘は僕の子ではないのかも、と思ったことがあるんです。僕もオヤジのように妻に騙されているのではないかと。さすがにそんな連鎖はないだろうと考えるのをやめたけど」

 妻とレスなのだから、自分に何か言う資格はない。彼はそう考えていた。そして勇気を出してレスを解消する気にはなれなかった。妻は外で何かあるのかもしれないが、家庭生活に支障をきたすようなことはなかった。それでいいと彼も考えていた。

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