大学時代に観た映画で「特殊な趣味」に目覚め…44歳夫は劣等感を抱き続けた 隠されていた出生の秘密

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学生時代、新社会人時代の劣等感

 ともあれ、希望の会社に入り社会人としての第一歩を踏み出したのだが、あのときのショックは心にしっかり残っていた。消そうとすればするほど、それは鮮明によみがえってくるのだ。

「入社して半年ほどたったときに先輩に風俗に連れて行かれました。無理強いされたわけじゃなくて、行くかと言われて、1度くらい行ってみてもいいなと思った」

 そこで彼は初めて女性の体に触れた。プロの彼女は女神のように優しく導いてくれたのに、彼は、なかなかうまくいかない自分に焦れた。結局は彼女のおかげで無事に成功したのだが、性的な劣等感も抱かざるを得なかった。

 彼には学生時代に恋心を抱いた女性がいた。だが、自分の性癖に怖じ気づいて告白もできなかったのだ。何度かのデートで彼女は彼から離れていった。あとから彼女も晴也さんを好きだったと共通の友人から聞いたときには、彼女はすでに故郷に帰って就職していた。

「人生、いつも出遅れる。そんな気がしていました。結婚して家庭を持ちたい気持ちはあったけど、自分にそんな幸福が訪れるのだろうかと不安にもなりました」

「男としての自分」に自信がない原点

 思えば、常に「男としての自分」に自信がなかった。晴也さんには2つ違いの兄がいる。この兄が文武両道に秀でた、地元の人気者だった。

「外見も男前だし、勉強もできる。小さいころから剣道とサッカーをやっていて足も速い。しかも明るくて親切。同級生や先輩後輩はもとより、先生にも気に入られる。それだけ人気があるとアンチもいるはずなのに、兄に限ってはいませんでした」

 2歳しか違わないから、地元の小中学校では「え? あの子の弟?」と怪訝な顔をされることが多かった。顔も性格も似ていない。晴也さんは勉強もスポーツも、特に秀でたところはなかったのだという。劣等感はそのころから芽生えていた。

「兄は高校受験で東京の名門私立に合格、親戚の家から通学することになりました。僕は地元の県立になんとかひっかかった。でも地元に兄がいなくなったので、少し気が楽になったのも事実です」

 兄はその後、有名大学に進学、晴也さんは2年後に東京の私立大学に進学したのだった。彼が東京へ旅立つ前の晩、父親が「女に騙されるなよ」と話しかけてきた。騙されるもなにも、モテないから大丈夫だと答えると「そういうところは不思議とオレに似たんだな」と父は意味不明な言葉を発した。

「社会人になってから、父のそんな言葉を思い出しました。20代後半になっても彼女ができなかったから。父はそこそこいい男なのに、やっぱりモテなかったのかなあと思ったり」

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