大学時代に観た映画で「特殊な趣味」に目覚め…44歳夫は劣等感を抱き続けた 隠されていた出生の秘密

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【前後編の前編/後編を読む】妻で満たせない「特別な欲望」は年下の女性と…「浮気ではない」と言い張る44歳夫の選択と代償

 映画を観て意見を戦わせたければ映画好きの友の顔を思い浮かべる。スポーツ観戦をしたければ、そのスポーツに詳しい人と一緒に見たい。それはごく一般的であり、言い方はよくないが、人は自分の要望や用途によって友人を選ぶこともある。

 だから夫婦間で、相手の拒絶によって「性」が抜け落ちていれば、外に求めてもいいという理屈になる。ところが「性」には「感情」がともなうから、生涯唯一と決めた相手を裏切ることになり、「不倫はダメ」と結論づけられる。

 では「不倫」でなければいいのか。恋愛感情を抜きにすればかまわないのかといえば、それもまたパートナーを傷つけることになるので許されない。結婚というのは、見方によってはがんじがらめになることでもある。

「じゃあ、特殊な趣味をもつ人間はどうすればいいんだろうと僕は思うわけです」

 鶴野晴也さん(44歳・仮名=以下同)は少し照れたような表情で言った。

「何か」がむくむくと頭をもたげていく感覚

 彼が自分の「特殊な趣味」に気づいたのは大学生時代だった。

「興味本位で成人映画を観に行って、緊縛の女性がスクリーンに映ったとき心臓がバクバクして汗が止まらなくなったんです。それは縛る側の目線ではなく、縛られている側の目線だった。自分にそういう関心があると思っていなかったのでショックを受け、それ以来、そういった映画を観るのはやめました。怖かったんですよね。自分がそっちに惹かれていくのが」

 自分の中の「何か」がむくむくと頭をもたげていく感覚があった。だからこそ、彼はその欲求を箱に閉じ込め蓋をし、心の奥深くにしまいこんだ。それからはごく普通の学生生活を送った。講義に出てサークルを楽しみ、アルバイトをして小遣いを稼いだ。

「自分の心の中の汚れを祓うためなのかなあ、善行を積まなければと妙な使命感にかられて、ボランティアサークルにも入り、年に2回くらい海外へも行きました。ただ、結果的にそれを就活のときに売りにした自覚があるので、今でもちょっと心が痛んでいますね」

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