「実は国民の3人に1人が患者」 頭痛専門医が教えるマッサージ法と食事 「チョコはダメ、コーヒーが有効」

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高級チョコほど……

 赤ワインのつまみにチーズがダメならチョコレートはどうか。この組み合わせも、ワイン好きに愛されているものだと思いますが、チョコにもチラミンやポリフェノールがたくさん含まれていて、しかもカカオ含有量が多いとチラミンとポリフェノールも多くなるため、高級チョコほど片頭痛を誘発しやすいのです。

 一方、片頭痛予防に有効なのは、例えばコーヒーなどに含まれるカフェインです。過剰摂取にならない範囲、1日200ミリグラム以内のカフェイン摂取は片頭痛持ちには悪くない食習慣です。

 その他では、マグネシウムやビタミンB2が片頭痛に効くとの医学論文が多数発表されています。バナナには双方が含まれます。また、前述したセロトニンの生成に寄与する必須アミノ酸のトリプトファン、ビタミンB6、糖質も、バナナには含まれています。従って、バナナは片頭痛持ちにとって良い食材といえます。意外かもしれませんが、魚介類をネタにしたお寿司も、ビタミンB6や糖質、トリプトファンが取れる有効食品です。

薬の飲み過ぎに注意

 薬についても触れておきたいと思います。ちまたには、何種類もの市販の鎮痛薬が流通していますが、専門医の立場から誤解を恐れずに言うと、どの銘柄も効き目に大した違いはありません。

 むしろ気を付けたいのは、薬の飲み過ぎです。実際、薬物乱用頭痛(MOH)という種類の頭痛が存在します。これは鎮痛薬の使い過ぎによる頭痛で、痛みを和らげるために飲んだ薬のせいで頭痛になるという本末転倒な現象が起きてしまうのです。

 MOHを考える上で大事なのは、鎮痛薬を「何錠飲んだか」よりも「何日飲んだか」です。脳の中には痛みの“番人”のような存在がいて、薬を飲んでいる状態が長くなると、その番人に変化が起こり、比較的軽度の痛みでも強い痛みと誤認させるように働いてしまうのです。

 例えば鎮痛薬の量を1日1錠に抑える代わりに5日連続で飲んだ場合(合計5錠)と、1日に3錠飲む代わりに3日間で服用をやめたケース(合計9錠)とでは、一見、後者のほうが体に悪そうですが、実は前者のほうがMOHのリスクは高くなります。もちろん、1日の服用錠数は定められた限度内であることが大前提です。

 最後に、改めてQOLの問題について考えてみたいと思います。重症片頭痛発作が日常生活に対して与える支障度は、認知症や四肢まひと同等に分類されています。やはり「たかが頭痛」の思考から脱し、「頭痛は病気である」としっかり認識して食事や薬などに気を付ける。このことが、日本人のQOL改善に大きく貢献すると私は考えています。

丹羽 潔(にわきよし)
頭痛専門医。1963年生まれ。日本頭痛学会専門医・指導医・代議員。東海大学医学部卒業後、ドイツとアメリカの大学で脳神経内科を学ぶ。院長を務める「にわファミリークリニック」で2008年に頭痛外来を開設。15年には、専門医のみによる日本初の頭痛専門クリニック「医療法人社団英麗会東京頭痛クリニック」を開く。『日本初の頭痛専門クリニックが教える 最新「頭痛の治し方」大全』などの著書がある。

週刊新潮 2024年9月19日号掲載

特別読物「国民の3人に1人が悩まされる『頭痛』の治し方」より

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