セブン-イレブンへの外資の買収提案に、1号店オープンを成し遂げた“コンビニの父”が語ったこととは

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「日本のコンビニの商品開発力は卓越している」

 国内に本格的なコンビニエンスストアのチェーンが誕生してから今年で50年。そのサービスは、半世紀で世界に冠たる地位を確立した。そんな折、最大手のセブン-イレブンにカナダの同業者から買収提案が――。われわれの慣れ親しんできた風景は、一変してしまうのか。【前後編の後編】

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 前編【ATMに行政書類の発行… 「コンビニは“過疎地の生命線”」  セブン-イレブンが外資に買収されるとどうなるのか】では、これまでの買収提案の内容とセブン側の対応について紹介した。

 コンビニ評論家の渡辺広明氏が言う。

「日本のコンビニは毎週100品以上、年間で約5000品の新商品が出て、うち7割ほどが1年で入れ替わります。つまりは、それだけ商品開発力が卓越している。さらに全国津々浦々、同じ商品が売られているというのはハイレベルのオペレーションで成り立っているわけで、まさに世界最高峰のリアル小売業です」

 連綿と受け継がれてきたこのシステムは外資といえど、おいそれと手を付けられる部分ではないといい、

「買収された途端にサービスがガラッと変わるとは思えませんが、それでも強いて懸念を挙げるならば、新商品はおろかテイクアウト用の中食もほとんど置かれていない“北米式”の店舗になりかねないという点です。週に100の新商品は多過ぎるから削減するとか、コストに見合うようにおにぎりの品質を落とすとか、はたまた廃棄が出ないように食品を軒並み冷凍にしてしまうとか……。となれば、相当数の消費者の支持を失うのではないでしょうか」(同)

「町の安全・安心拠点」

 また、生活インフラの観点から外資の買収を危惧するのは、コンビニジャーナリストの吉岡秀子氏である。

「例えばコンビニは、地震など災害時には要請に応じて物資を届ける『物資支援協定』を全国の自治体と結んでいます。帰宅困難者が発生した場合は『災害時帰宅支援ステーション』としてトイレなどを提供する取り決めもなされており、大雨などで河川が増水して危険を感じるような際には、近くのコンビニが自治体に報告するケースもあります」

 さらに続けて、

「店の入口に、周知する“象のステッカー”を貼って『セーフティステーション』としても機能しています。これは助けを求められたら緊急通報したり、特殊詐欺を防いだり、また迷子や認知症の方を保護したりと、町の安全・安心拠点の役割を果たす活動です。小売業の枠を超え、こうして重要なインフラの役割を担っているコンビニが、外資に買収されても同じ機能を維持できるのか、非常に疑問です」(同)

 M&Aに詳しい東京国際法律事務所の森幹晴弁護士は、

「今後のポイントは、ACT(アリマンタシォン・クシュタール)側が再提示する買収額です。HD側が買収を拒否するのであれば、提示された額まで自力で株価を引き上げることが求められ、それがHD経営陣にとっては重圧となります。ACTは資金調達のため銀行などと協議の上、今月中に再び提案をしてくるかもしれません」(同)

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