「桜の花は見られない」余命宣告された森永卓郎が独白 「延命にこだわらない私が月100万円の治療を受ける理由」 資産の終活のウラ側も

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父が亡くなった後の苦い経験

 亡くなった親の遺産がどこにあるのか分からない。そんな経験をした方も多いはず。余命宣告を受けた経済アナリストの森永卓郎氏(67)がまず案じたのは残される家族の苦労だった。預金や株、膨大な本やコレクションはどうする? ご本人が資産の「終活」を書き記す。【前後編の前編】

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 投与した抗がん剤が体に合わず、私は昨年末に死の淵をさまよった。一命を取りとめた私が思ったのは、資産整理を進めねばということだった。父が亡くなった後の苦い経験があったからだ。

 13年前、東日本大震災直後に亡くなった父は、生前、「預金や株式はあちこちにある」と言い続けた。ただ、どこにあるのかいくら聞いても、「それは分からない」の一点張りだった。資産をすべてあぶり出し、相続税の申告期限である10カ月以内に正確な申告をしないと、脱税になってしまう。あせった私は、実家にこもって、リビングに山積みになっていた郵便物のなかから、金融機関からのものを探し出し、一つ一つ父の口座がないか問い合わせていった。情報開示を受けるためには、所定の手続き書類に加えて、相続人全員の合意書と父が生まれてから死ぬまで、戸籍を置いた全ての市役所の戸籍謄本が必要だ。父は頻繁に本籍を移していたので、この作業だけで3カ月以上の期間を要した。東日本大震災で私の仕事が軒並みキャンセルになっていなかったら、とてもできない量の作業だった。

現金化の動機

 だから、父の相続税申告を乗り切った私は、自分自身の資産がどこの金融機関にあるかというリストを作ってパソコンのハードディスクに保存していた。最初の事件は数年前に起きた。私のパソコンのハードディスクが突然死したのだ。幸い、妻のパソコンにバックアップがあったので事なきを得たが、冷や汗ものだった。

 今回、私が挑んだ資産整理は、預金先を2~3行に絞り込み、株式などの投資資産を現金化しておくことだ。父が亡くなった後、相続税の申告直前に税理士から連絡が入った。父は金貯蓄口座を持っていて、私は父が亡くなった直後にそれを売却して相続財産に加えていたのだが、それだけでは足りず、売却益への課税分も納税しないといけないのだそうだ。それは株式や投資信託でも同じだ。投資資産を持っていると、相続の手続きが一層面倒になる。それが現金化の動機の一つだった。

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