漫画家のサイン色紙や原画の「真贋鑑定」サービスが話題 ネット上は「贋作だらけ」で“プロ”が手を染めることも

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膨大なデータが武器になる

 こうした事態を重く見たまんだらけが、長年のノウハウを広くコレクターのために解放しようというのが今回の簡易鑑定である。同社は、数十万点に及ぶ漫画家の膨大なサインのデータベースを有し、漫画家本人が書いた「あ・い・う・え・お」などの筆跡までピックアップしてデータ化しているという。

 さらには、近年は複製原画などを、一点物の“原画”と言って売ろうとする悪質な出品者も多い。しかし、まんだらけはこうした複製原画も取り扱ってきた経験から、複製か直筆かどうかの判定もできる。他社にはできない高度な鑑定が実現できるのは、こうしたデータを駆使できること、そして専任の鑑定士が育っていることが強みといえる。

 同社は、ヴィンテージ古書のパイオニアであるとともに、早くから漫画家の原画やサイン色紙を取り扱ってきた。2ヶ月に一度発行される図録『まんだらけZENBU』では、これまでも手塚治虫から宮崎駿をはじめとして、数多くの貴重な原画を販売してきた。原画という一点物を取り扱い、値付けをしてきたため、大きな騒動に発展したこともある。

 しかし、そのなかから手塚治虫が親友とやり取りした交換日記「昆虫手帳」をはじめ、水木しげるの直筆紙芝居「人鯨」など、日本漫画史に残る歴史的な名品が発見された。そのため、同社には色紙や原画に関する膨大なデータベースが蓄積されており、世界各国のコレクターや、さらには美術館・博物館も信頼を寄せている。

真贋鑑定のビジネスが広がる兆しも

 こうした真贋鑑定は、大きなビジネスとして発展する可能性がある。というのも、あるフリマサイトはルイ・ヴィトンやエルメス、ロレックスなどの高級ブランド品の鑑定を行うサービスを行っているのだ。また、ポケモンカードや遊戯王カードなどのカードゲームに関しても、購入後に鑑定機関で鑑定してもらえる有料サービスをはじめたサイトまである。

 ポケモンカードも一時期はあまりに偽物が増えたことから、あるカードショップでは買い取りを停止したこともある。昨今、ポケモンカードの投機熱が冷めているといわれるが、精巧な偽物が蔓延しすぎたため、コレクターや投資家も迂闊に手を出せなくなったことも一つの要因といわれる。

 偽物が多すぎるネットオークションやフリマサイトと差別化を図ろうという企業も増えている。まんだらけは自社でオークションを主催し、貴重かつ高額な原画や色紙、ソフビ人形などには自社の保証書をつけている。万が一、偽物とわかった際には無期限で全額払い戻しに応じるというかなり手厚い保証である。

 金貨などのアンティークコインも、コレクターはもちろん投資家から人気が高いが、近年は3Dプリンターなどを駆使した偽物が増加している。そうしたなかで、鑑定に自信を見せるのが老舗のコイン商である。自社の鑑定書を発行する例もあるし、フリマサイトや個人間売買では得難い安心をウリにして、コレクターから支持される店も多い。

 ネットオークションやフリマサイトによって、中古商品の売買は極めて身近になった。これにより、リサイクルショップや古本屋が苦境に陥った例もあると聞くが、その一方で、より専門性の高い品物に関しては、実店舗をもち、高い鑑定眼をもつ企業の需要が一層高まっていくと考えられる。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部

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