「介護の不安」で58年間連れ添った妻を絞殺した87歳夫に懲役8年の実刑判決 法廷で「涙ひとつ見せなかった被告」に裁判長が放った言葉

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妻は台所で立ったまま食事をしていた

 また京子さんは以前から台所で一人食事をしていたと明かした。

検察官「台所でどうやって?」
吉田「立って食べていました」
検察官「足が悪いのに?」
吉田「寄っかかることはできますし」
検察官「なぜ居間で食べるように言わなかったのですか?」
吉田「そういうことは言わなかった」

 その後、裁判員や裁判官の質問で京子さんを殺害した場面について再度問われ、こう答えた。

「これは言ってこなかったことですが、(抵抗されて首を絞めるのを)途中で止めようと思ったことはあった。ただここで止めると言語障害が起こりうる可能性があると考え、かえって悪い結果になると瞬間的に考えました」

妻の“無念”を代弁した若い検察官

 検察官は論告でこう吉田を厳しく指弾した。

「京子さんは突然、長年生活を共にしてきた夫である被告人から、自分や息子には介護ができないといった身勝手で理不尽な理由で、首を絞められ、驚きと苦痛の中でその生涯を閉じることになったのであり、その無念さは計り知れない」
「被告人が感じていた不満は自己中心的なものであり、京子さんの殺害を決めた理由も不合理で身勝手かつ短絡的である」

 遺族が寛大な処分を求めている点についてはこう訴えた。

「被害者である京子さんを悼む言葉は少なく、京子さんの気持ちを代弁しているとは思えず、斟酌するにも限度がある」

 そして懲役12年を求刑した。被告人質問や論告を行った3人の検察官のうち2人はまだ20代と思しき若い男女だった。遺族がこぞって吉田を擁護する中、京子さんの“無念”を代弁したのは検察官だった。

裁判長「後悔の念を抱いているように見受けられない」

 一方、弁護人は、事件2カ月前に精神的に頼りにしていた甥が亡くなったことがきっかけで判断能力が低下し、突発的に起こした犯行だったとして懲役5年が相当と訴えた。

 結審後、吉田は裁判長から「何か言いたいことはありませんか」と問われたが、「特にありません」と答えた。

 9月20日、東京地裁は吉田に懲役8年を言い渡した。野村賢裁判長は「身勝手な動機に基づく短絡的な犯行」とした上でこう述べた。

「被告人は犯行を認め、反省の弁を述べているが、その供述からは被害者の無念に思いを致したり、殺害に及んだことに後悔の念を抱いているように見受けられない」

 吉田は淡々と判決を聞き、礼をしてから姿を消した。最後まで涙ひとつ見せることはなかった。

前編【「介護の不安」で81歳妻を絞殺した87歳夫に懲役8年 「自分が残った方が子供たちに迷惑をかけない」58年間連れ添った妻を殺めた“身勝手すぎる理由”】では、吉田が事件を起こすまでの家族関係や証言したり陳述書を出した遺族がこぞって吉田を擁護した様子を伝えている。(文中呼称略)

デイリー新潮編集部

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