クレイジーケンバンドに「今までなかった曲調」をもたらした「愛犬の死」 横山剣が「新作は全曲最高」と言い切れる根拠

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常に最新が最高傑作であるべき

 バンドも、人間も、どんな仕事でも、ものごとは変化していくべき。横山はそう考えている。

「何事もすべては変わっていく。社会も世界も変化しているので、音楽も変わって当然。それが自然です。“初志貫徹”とか“初心に還る”と言う人、多いですよね。その気持ちはね、よくわかります。でも、必ずしも最初がいいとは限りません。原点ってそんなに大切なのかな? と思うことはあります。

 スタートした頃は、稚拙なことばかり。続けることでアイディアも生まれてきたり、特異性が育まれたり。ほんとうにやりたいことを実現できるのは経験を積んだ今だと感じています。20年以上の積み重ねによってできる音は間違いなくある。

 最新が最高傑作であるべきです。言い方を換えると、いつも、今が原点です。体力をはじめ、若いときのほうがいいことももちろん、いろいろありますよ。でも、懐かしがっていても若さは戻ってきません。だったら、今の強みを発揮したほうがいい作品ができる。それに、楽しい」

 アルバム収録曲には、昔作ったものの未発表のままだった作品もあるという。

「『おお! マイガール』という曲名は、テンプテーションズの『マイ・ガール』とニール・セダカの『おお! キャロル』へのリスペクトからなんですが、ずっと封印していました。初期のCKBでは難しかったんです。でも、今回ホーン・セクションを加えて新鮮な気持ちで、高い精度でレコーディングできました」

チワワの死がきっかけで

 CKBの魅力の1つは、アルバムを通して喜怒哀楽があること。騒いで、笑って、がっかりして、悲しんで……。人生のように忙しい。

 今回、ラストを飾るのは「哀」がベースの曲だ。

「ラストの『Sha na na na na』は、愛犬の死が影響していると言えます。15年間一緒に暮らしたチワワです。当時、僕は入院をしていて、愛犬は退院の前日に逝きました。愛犬を失ったことがきっかけなので、いままでのCKBにはなかった曲調になっています。一緒に暮らした動物たちのことを思ったら、メロディーが湧き出てきました。

 ゴスペルのクワイアのようなコーラスは、最近のCKBで大きな力になってくれているサウンド・プロデューサー、Park君の提案によるもの。僕には思いつかないような展開です。自分が欲しくて買うものと、プレゼントされてこそうれしいものって違いますよね。このコーラス部分はまさに後者です。だからこそありがたく、今までの自分では思いもよらない、さらにグッと来るメロディーが加わって、気持ちを入れて歌えました。」

 ***

 ここから話は「今でも涙してしまう曲」に。第2回【由紀さおりの別れ歌は「メロディー、歌詞、歌、完璧です」 クレイジーケンバンド横山剣の「いまだに泣ける名曲」5選】では、横山が選んだ「感涙必至の名曲ベスト5」を詳細にご紹介する。横山の“泣きツボ”にハマるのはどんな曲なのか? 香港フリークになったきっかけも隠されているようだ。

神舘和典(コウダテ・カズノリ)
ジャーナリスト。1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。『不道徳ロック講座』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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