伊藤蘭が語る、昭和のキャンディーズ時代から、令和になって変わったこと・変わらないこと コンサートは「若い方でも絶対に楽しめると思います」

  • ブックマーク

伊藤蘭のコンサートは“ファン参加型”。「若い方も安心していらしてください」

 また、今年8月から来年1月までは、『伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024-2025』が全国9会場で開催される予定だ。

 彼女のコンサートは毎回、伊藤蘭名義のソロ楽曲もキャンディーズ時代の楽曲も盛りだくさんだが、ソロで歌う時は女性ヴォーカルバンドのような勢いがあり、キャンディーズを歌う時は、女性コーラス2人と組んだヴォーカル・トリオのような華やかさがあり、いずれも“声が出ようが出まいが、元気でいればそれで十分”という懐メロ大会とは全く異なっている。それでいて、ファンとの距離を感じさせず、音楽を届けたいという熱意がひしひしと伝わってくるのだ。

「実は、キャンディーズの頃から、私たちのステージはバンドメンバーのみなさんと作り上げるというスタイルを確立していて、今も、バンドあっての伊藤蘭だと思って続けているんです。もう、そういうカラダになっちゃった(笑)! やっぱり、ステージは“生もの”だと思うんです。もちろん、お客さまと距離を取ってショーアップするスタイルも、とっても素敵ですよね。でも私の場合は、ファンのみなさんとの一体感を大切にしたいんです。

 そして、キャンディーズの曲は、二声や三声でハモるというコーラスワークありきなので、コーラスのお二人に助けていただいて、なるべく当時の形に近いものを再現するようにしています」

 そういった彼女の気持ちが伝わっているのか、観客も大人しく聴いているというより、掛け声や手拍子にも積極的な方が多いように感じた。

「確かにそうですね。ソロ・デビューしたばかりの’19年の頃は、みなさん、“どう応援すればいいんだろう、静かなのがいいのか…”と、戸惑いもあったと思うんです。そこから徐々に盛り上げてくださって、今ではすっかり“ファン参加型”のコンサートになっていますね!」

 今回のツアーの内容を、ネタバレのない範囲で尋ねてみると、

「見どころとしては、今年5月29日に、1日限りのコンサートでも初の試みとして披露した『やさしい悪魔』と『アン・ドゥ・トロワ』のニュー・アレンジですね。その日、多くの方に喜んでいただけた感触があったので、今回のツアーでも披露しようと。そして、新曲の2曲も歌いますし、他にもこれまであまり歌ってこなかったキャンディーズの楽曲をプラスして、濃厚な構成になっています。もちろん、伊藤蘭の楽曲もたっぷり聴いていただけます(笑)」

 とのこと。最後に、キャンディーズや伊藤蘭さんの作品を聴いている方へのメッセージもお願いしてみた。

「キャンディーズの楽曲がサブスクで解禁される(’19年4月24日~配信開始)というお知らせが届いた時、私は“何のこと??”って、まったく意味が分からなかったんです。きっと、今もCDで聴いてくださっているファンの方にとっては、“なじみのない作業があるのでは?”と不安かもしれませんね。でも、私がそうであったように、一度覚えてしまえば、手軽にあらゆるジャンルの曲が聴けて、音楽をより身近に感じることができると思うので、長年のファンの方でも、意外な発見があるかもしれませんね。

 そして、若い方は、ひと昔前なら簡単には手に入らなかった音楽がすぐ聴けちゃう、もっとも幸せな時代に生きてらっしゃるので、親御さんや祖父母世代の曲も気軽に聴いてみてください。そして私のコンサートにも、是非是非いらしてください。絶対に楽しめると思いますよ! お父さんのようなファンの方たちが温かく迎えてくださると思うので、一人でも安心していらしてくださいね(笑)」

 昭和のキャンディーズ、令和の伊藤蘭としての活動で一貫しているのは、ファンやスタッフ、バンドのメンバーとともに歌を大事にしていたい、という想いだ。そうやって音楽に根差したアイドルだったからこそ、キャンディーズは現代でも愛されている楽曲が多く、また伊藤蘭自身も、今なお新たなJ-POPに挑んでいるのだろう。かといって、奇をてらって飛び道具に頼ることもなく、あくまでも明るく楽しく音楽を届けるというスタイル。伊藤蘭のように、ひたむきに唯一無二の存在であり続ける人は、エンタメ分野に限らず、今後ますます求められていきそうな気がする。

 ***

 全3回でお送りした伊藤蘭さんインタビュー。第1回ではキャンディーズ時代の人気曲を、第2回では隠れた名曲とソロ名義の人気曲について語ってくれた。

《INFORMATION》
ニューシングル「風にのって~Over the Moon」発売中
〈収録曲〉
1. 風にのって~Over the Moon
2.大人は泣かない
3.風にのって~Over the Moon (オリジナル・カラオケ)
4.大人は泣かない (オリジナル・カラオケ)

『伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024-2025』開催中
指定席:税込9900円/U-18シート:税込5500円
〈今後の公演〉
2024年
・名古屋 9.23(月・振休)愛知県芸術劇場 大ホール
 17:00開場 / 18:00開演
・福岡 9.28(土)キャナルシティ劇場
 16:00開場 / 17:00開演
・熊本 9.29(日)熊本県立劇場 演劇ホール
 16:00開場 / 16:30開演
2025年
・京都 1.12(日)ロームシアター京都 メインホール
 16:00開場 / 17:00開演
・神戸 1.13(月・祝)神戸国際会館こくさいホール
 16:00開場 / 17:00開演
・東京 1.25(土)東京ガーデンシアター(有明)
 16:00開場 / 17:00開演

(取材・文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)

伊藤蘭(いとう・らん)
  東京都出身。1973年にキャンディーズのメンバーとしてシングル「あなたに夢中」で歌手デビュー。’78年にグループ解散後、休業を経て、’80年に女優活動を再開。以降、数多くの映画、ドラマ、舞台に出演し、’19年5月、ソロ歌手としてデビュー。これまで『My Bouquet』『Beside you』『LEVEL 9.9』と、3枚のアルバムをリリース。’24年8月には、シングル「風にのって~Over the Moon」をリリース。また同月から翌年1月まで『伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024-2025』を開催中。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。