キャンディーズ・伊藤蘭が明かす、アン・ルイス考案“小悪魔衣装”への印象 46年ぶりの『紅白』出場で届けた想いとは

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46年ぶりの『紅白』は「たくさん練習した」、自身のソロ曲への思いも語る

 続いて、ここからは伊藤蘭名義でのソロ作品について触れていこう。伊藤蘭は、’19年にソロ歌手としてデビューし、’23年にはなんと46年ぶりにNHK紅白歌合戦への出場を果たし(‘77年のキャンディーズ以来)、ファンに囲まれて「年下の男の子」~「ハートのエースが出てこない」~「春一番」を3曲メドレーで披露した。ちなみに、この46年というのは、歌手として史上最長のブランクとなっている。

「『紅白』では、3曲の長さをコンパクトにしつつメドレーにする必要があり、練習をたくさんしました(笑)。緊張もしましたが、ファンのみなさんと一緒に歌う場を与えていただけたことがとっても心強く、また、全国のファンの方々に歌っている様子を届けられたのが嬉しかったです」

 それでは、伊藤蘭の人気曲を見てみよう(キャンディーズ時代のソロ作品は、ここでは対象外とした)。

 Spotifyでの再生回数第1位は、’20年の配信シングルで、翌’21年にアルバム『Beside you』に収録された「恋するリボルバー」で、Superflyのメンバーだった多保孝一が作曲・編曲を手がけている。サーフロックとJ-POPが融合したようなナンバーで、伊藤蘭がサスペンスタッチのアクション・ドラマに出演したようなカッコよさがある。

「この曲は、インストゥルメンタル・バンドのザ・ベンチャーズが大ブームだった頃を思い出しますよね。私のコンサートでも盛り上がるので、定番になってきています。選曲の際には、スタッフのみなさんも私も、“カッコいいからこれがいい!“と満場一致で、歌おうって決めました。これがダントツ人気なんですね」

 続く第2位は、’23年の3rdアルバム『LEVEL 9.9』に収録の「なみだは媚薬」。今や“おとな世代のポップス”の多くを手がけている松井五郎が作詞、80年代から女性アーティスト向けの軽快なメロディーが得意な山川恵津子が作曲・編曲を手がけたポップスで、楽観的でおしゃれな雰囲気は伊藤蘭そのもの、という気がする。松井五郎といえば、安全地帯や工藤静香など、湿り気のある夜を舞台とした作詞が得意だろうが、この作品にはそういった翳りが一切ないので、伊藤蘭へのあてがきは明白だろう。

「松井五郎さんとは、この曲の前にいろいろとお話をして。“歌詞の中に比喩を入れてほしい”とお願いしたら、自分でも大満足の曲を送っていただきました」

 伊藤蘭ほどの長いキャリアを経験すると、人生を振り返ったような大作も歌えるのでは、と尋ねてみると、

「そういった歌も素敵ですが、私にはいつまでもポップな楽曲が似合っているのかも、と思って歌っています」

 Spotify第3位は、3rdアルバム『LEVEL 9.9』に先行して配信された「Shibuya Sta. Drivin’ Night(シブヤ ステーション ドライヴィン ナイト)」。こちらは電子的に加工した歌声や打ち込み系の演奏音など、近未来の夜を想わせるポップスで、ワクワクさせられる。

「渋谷の街を具体的に歌うというのを、初めてやってみました。こういったサウンドも、声が加工されているのも楽しいですよ。自分の中の新たな扉が開いた感じがします」

 伊藤蘭部門のTOP3の3作は、いずれもエイジレスかつ、ジャンルレスで、キャンディーズの延長線上のような歌謡曲を予想していた人は、心地よく裏切られることだろう。取材中や周囲からの証言でも出てくるように、柔らかい雰囲気を自然に醸し出している伊藤蘭だからこそ、そういった楽曲が提供されるのだと感じる。また、伊藤自身も長いキャリアに依存せず、常に新たな楽曲に挑んでいるからでもあろう。こうした彼女の生き方は、私たちの社会生活においても大いに参考になりそうだ。

 最終回となる第3回では、4位以下の人気曲や初のCDシングル「風にのって~Over the Moon」について尋ねてみたい。

《INFORMATION》
ニューシングル「風にのって~Over the Moon」発売中
〈収録曲〉
1. 風にのって~Over the Moon
2.大人は泣かない
3.風にのって~Over the Moon (オリジナル・カラオケ)
4.大人は泣かない (オリジナル・カラオケ)

『伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024-2025』開催中
指定席:税込9900円/U-18シート:税込5500円
〈今後の公演〉
2024年
・名古屋 9.23(月・振休)愛知県芸術劇場 大ホール
 17:00開場 / 18:00開演
・福岡 9.28(土)キャナルシティ劇場
 16:00開場 / 17:00開演
・熊本 9.29(日)熊本県立劇場 演劇ホール
 16:00開場 / 16:30開演
2025年
・京都 1.12(日)ロームシアター京都 メインホール
 16:00開場 / 17:00開演
・神戸 1.13(月・祝)神戸国際会館こくさいホール
 16:00開場 / 17:00開演
・東京 1.25(土)東京ガーデンシアター(有明)
 16:00開場 / 17:00開演

(取材・文:人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)

伊藤蘭(いとう・らん)
  東京都出身。1973年にキャンディーズのメンバーとしてシングル「あなたに夢中」で歌手デビュー。’78年にグループ解散後、休業を経て、’80年に女優活動を再開。以降、数多くの映画、ドラマ、舞台に出演し、’19年5月、ソロ歌手としてデビュー。これまで『My Bouquet』『Beside you』『LEVEL 9.9』と、3枚のアルバムをリリース。’24年8月には、シングル「風にのって~Over the Moon」をリリース。また同月から翌年1月まで『伊藤 蘭 ~Over the Moon~ コンサートツアー 2024-2025』を開催中。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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