脂身が多すぎるイベリコ豚、セブンの“上げ底”…今の世の中に「詐欺食品」が大量発生するワケ(中川淳一郎)

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 SNSの普及に伴い、企業にとっては面倒くさい時代になった一方、消費者にとっては良い時代になりました。チェーン店「しゃぶしゃぶ温野菜」の食べ放題コースで提供されたイベリコ豚の脂身の多さに驚いた客がその写真をXに投稿。

 確かにこれはすごい。脂身率92%といったレベルで白いのです。ラードを作る作業の様子か!と思うほどです。投稿者は驚いたものの味は良かった、と言い、運営会社はこのレベルのものは提供すべきではなかった、と述べました。

 SNSがなかった時代だった場合、この驚き写真が第三者の目に触れることはなく、クレームを入れてもその客と運営会社の間で終わる話です。しかし、今は多くの人が目にする結果になりますし、それを探り当てたネットニュースサイトもこの件を「脂身の多さに驚きの声」みたいな記事にしてくる。

 運営会社からすれば「頼むから現場の皆さんはヘンなことをしないでください! マニュアルに従ってください!」と言いたいところでしょう。まぁ、これで品質が上がるのであれば、客にとってはいいことですし、その店自体もより人気になるでしょうから、顧客からのこうした投稿はありがたいものといえるかもしれません。

 この手の投稿でさらされることが多いのはセブン‒イレブンとマクドナルドです。セブンの場合、弁当や総菜が上げ底になっていることがあるほか、サンドイッチも切り口だけ見ると具がたくさん入っているように見えるものの、パンをめくってみると具は切断面に片寄っている。これが非難されるのです。

 あと、「練乳いちごミルク タピオカ入り」は炎上しました。棚に並んでいる様子を見ると、底にいちごのピューレ状果肉が沈殿し、上の方まで多くのいちごが浮遊しているように見えます。しかし、この果肉はパッケージのデザインだった、というオチがつきます。となると、飲む前と飲んだ後のパッケージを並べて投稿したりニュースサイトが取り上げたり、セブンを非難する流れになる。

 マクドナルドの場合は「写真詐欺」と言われます。広告の写真と実際の商品が全然違う、と比較する人が出てきます。アレの場合は、おいしそうにする工夫と加工を丁寧に施しているワケなので仕方ない面はあるものの、あまりにもかけ離れていたらがっかりする。

 しかし、写真詐欺については一般人もやってるんですよね。目がより大きくなるようなアプリを使って写真を公開するのはもはや定番。マッチングアプリ用の写真にときめくも、実際に会ってみたら互いに「やられた……」ということもある。これだって立派な写真詐欺。

 料理の写真だって、例えば「超!美味しく変換 料理の写真を美味しそうに自動補正するよ」というウェブサービスを使えば、上手に撮れた写真はさらにおいしそうに、まずそうだった写真はそこそこおいしそうに補正してくれます。

 冒頭の件に戻りますが、外から持ち込んだ傷んだ食材などを使い、承認欲求を満たすために自作自演をする不届き者も出てくる可能性はあります。監視カメラ需要がますます高まるのでしょうね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年9月19日号掲載

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