「事故が起きたのは高速で走行する区間…本当に肝が冷えました」 走行中の新幹線で「連結が分離」の衝撃 社内からも驚きの声
運転士と車掌の対応は「適切」
――列車が315kmという高速で走行していた最中に、分離したといわれている。
D:私も何度も乗務したのでわかるのですが、今回の事故が起こった場所は、仙台に向かう列車が利府のイオンを通過する前。つまり、まだまだ高速で走行している区間なのです。この区間で分離したと聞き、映像で停車位置を見た瞬間、私は肝が冷えました。よく脱線や追突が起きなかったなと。
――大事故になりかねなかったが、幸いにも死者は出ていない。元新幹線車掌として、今回の運転士や車掌の対応は適切だったと考えるか。
D:あくまでも個人的な感想ですが、今回は安全装置が想定通りに作動し、車掌も訓練通りかそれ以上の動きができたおかげで、死亡事故などに繋がらなかったのでは。起きたことはよくないのですが、起きてしまった時の装置作動、そして車掌の対応は適正だったと思います。
――車内では大きなトラブルなく、乗客も冷静だったようだ。
D:正直、震度7レベルの大地震で車両が被災したくらいの衝撃的な出来事でしたから、規模の割には怪我人や死亡者をゼロにできたのは意義深いと思います。身内擁護と言われたらそれまでですが、車両を設計した技術者や車掌の日頃の訓練の賜物だなとは思います。
分離を想定した訓練は行っている
――今回の事故のような重大な出来事が起こった場合の対処法は、社内で共有されているのか。
D:在来線も新幹線も基本的には同じですが、万が一分離したら、車両は基本的に非常ブレーキがかかるようになっています。乗務員も、運転士、車掌にかかわらず、とにかく列車を止めるように指導されています。車掌は8月など繁忙期に限り休む場合がありますが、現場の訓練はベテランから新人まで全員が月1回受けます。新幹線の車掌はこれに加え、新幹線設備に特化した施設で行われる訓練が、約2年に1回あります。
――新幹線が連結したり、分離したりするメカニズムについては学習するのか。
D:メカニズムは技術者ではないのでわかりませんが、列車を分離させる方法は勉強します。そんなものは大昔のシステム時代の出来事と思いながらも、ちゃんと勉強していました。とにかく、まさかこんなことが起きるとは……。未だに信じられません。
――話を聞くと、しっかり訓練が行われているといった印象を受ける。
D:一方で、駅に勤務する社員を見ていると、不安を感じます。若い人が増えていて、「新幹線がどうやって連結しているか」「どちらが東京寄りの編成なのか」まで、わかってない人が多いのです。だから、今回の事故に第一報が伝わっても、若者は「???」という感じでした。若者批判ではありませんが、国鉄時代から生きてきたベテラン社員がいなくなり、列車の仕組みを説明できる人が少なくなった代償ですね。
[2/3ページ]