西武「次期監督」で思い出す名将「森祇晶」辞任の舞台裏…フロントとの確執に苦悩「使ってやっているんだ、という雰囲気があるんだよ」

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監督辞任だけでは済まず

「共同通信が監督勇退の記事を出しました」

〈私は仰天した。いま、コーチ陣に辞意を伝えたばかりである。彼らが漏らすはずはないし、第一、時間的に不可能である。選手たちには、まだ伝えていない。私が辞めることを知っているのは、球団上層部の人たちだけである。「いったい、どういうことですか」私はフロントに声を荒らげた 。受話器を置くと、身体がわなわな震えた。大事な第6戦を前に、なんてことだろうと思った〉(同)

 翌10月29日付の中日新聞朝刊によると、森監督が無念そうに、こう打ち明けたことがあるという。

「この球団は、勝っても本当に喜んでくれているのかどうか分からない時がある」

「使ってやっているんだ、という雰囲気があるんだよ」

 勝つことにこだわり、無敵の常勝軍団を作り上げた森監督の辞任は、なんとも後味の悪いものだった。しかも、問題はこれだけで終わらず、オフにはエースの工藤公康(61)、チームリーダーの石毛宏典(67)が、FAで福岡ダイエーに移籍する。石毛は森監督の後任に打診されていたが、現役にこだわりたいとの思いから拒否した。

 さらに2年後の96年オフには主砲・清原和博(57)がFAで巨人へ。黄金時代を支えた主力選手が相次いでチームを去った。西武が日本一を奪回するのは2004年。この騒動から実に10年を要することになった。

「森監督が対戦した当時の巨人は、長嶋茂雄監督(88)でした。二人は共に巨人でV9を支えましたが、引退したのも同じ年です。長嶋監督は『巨人軍は永久に不滅です』で知られる引退セレモニーがありましたが森監督にはなく、静かにユニフォームを脱ぎました。試合中は、全く表情を変えず感情も出さず、腕組みをしたままじっと試合を見つめる森監督の姿が懐かしいです」(前出のファン)

 強いライオンズに再生させる監督は誰になるのか――。

デイリー新潮編集部

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