「カメ止め」に続き「侍タイムスリッパー」も…上映作品が全国ヒットを連発 支配人が明かす「シネマ・ロサ」が“自主映画の聖地”と呼ばれる理由

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ロサ会館のテナントとして

「シネマ・ロサ」は、終戦直後の1946年、ほぼいまの場所に、「シネマ・リリオ」「シネマ・セレサ」「シネマ東宝」などとともに開館した。

 1968年、この地にアミューズメント・ビル「ロサ会館」がオープンする際、「ロサ」(2階)と「セレサ」(地下)の2館が残り、同会館にテナントとして入居、再オープンした(のちに、地下もあわせて「シネマ・ロサ」となる)。

「1990年代半ばまでは、2階でB級アクション映画を、地下で主にヨーロッパのミニ・シアター系作品をかけていました。どちらも2本立て興行でした」

 と歴史を語ってくれるのは、「シネマ・ロサ」支配人の矢川亮さんである。

「しかし、次第に“名画座2本立て興行”が、ダメになってきたんです。そこである時期から新作ロードショー館に切り替えました。そして、年に数回、ゴダールやトリュフォーなどの名作をレイト・ショーで特集上映していたんです」

 やがて、映画界にもデジタルの波が忍び寄ってくる。それまで映画学科の学生やマニアたちは、自主映画を8mmや16mmの「フィルム」で制作していた。それが、もっと手軽な「ビデオ」で制作できるようになったのだ。

「そのころ、当館でもビデオ・プロジェクターを購入したんです。それをもっと活用しようということになり、自主映画の上映会を開催するようになりました」

 そんなある日、かつて「シネマ・ロサ」でアルバイトしていた若者が、さる自主映画に端役で出演した、その作品が映画祭で賞をとったので、ぜひ上映してほしいといってきた。

「それが、冨永昌敬監督の作品で、彼が水戸短編映像祭でグランプリを獲得した直後でした。素材はDVカムだという。『それならうちで最近、上映機材を買ったから、かけられるよ』と、レイトの1週間限定で上映しました」

 冨永昌敬監督は、昨年公開の『白鍵と黒鍵の間に』(出演:池松壮亮、仲里依紗、森田剛ほか)が話題になったばかりだ。

「その冨永監督の紹介で上映したのが、日本大学芸術学部映画学科の後輩、入江悠監督の作品です。同じく日芸出身では、沖田修一監督の自主映画も上映しています」

 入江悠監督は、「SRサイタマノラッパー」三部作(2009~2012年)や、現在公開中の「あんのこと」(出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎ほか)などで知られる。沖田修一は「横道世之介」(2013年)、「さかなのこ」(2022年)などの監督だ。

「正直いって、どれも(観客の)入りは、それほどではありませんでした。しかし、そのうち、『シネマ・ロサは、自主映画をかけてくれるようだ』との噂が広まり、自主映画の上映が増えるようになりました」

 実は「シネマ・ロサ」では、自主映画の上映については、会場レンタル費をとる、いわゆる“箱貸し”は、おこなっていない。あくまでも歩合制で、費用は入場者数次第。映画館も制作者側とともに、リスクを負う形をとっているのだ。このあたりも、自主映画の世界で信用を得ている理由のひとつかもしれない。

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