「W杯優勝」が野望「習近平」の面目丸つぶれ…腐敗する「中国サッカー界」八百長、賭博、汚職で34人が懲役刑、元代表は永久追放  

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 中国公安省(日本の警察庁に相当)は2022年からの2年間、中国国内で行われたサッカーの試合のうち、実に120ゲームでオンライン賭博や八百長などが確認されたことを10日、明らかにした。補助金交付に関わる贈収賄容疑も含め、41チームの選手やチーム関係者ら128人が取り調べられ、44人が有罪判決を受け、うち34人が懲役刑を下されている。それに関連し、サッカー関係者43人がサッカー界から永久追放された。これらの犯罪には黒社会(中国マフィア)が絡んでおり、中国サッカー界の腐敗体質があぶり出された。

 中国にとってサッカーは習近平国家主席自らが「ワールドカップ優勝」を目標に掲げ、15年以来、6万カ所のサッカー場を新設するなどの「サッカー改革」を主導していただけに、習氏の面目は丸つぶれとなった。
【相馬勝/ジャーナリスト】

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日本戦に大敗で「屈辱的」

 今回の公安省による捜査では128人の関係者が取り調べを受け、そのうち83人の選手、審判、コーチ、クラブマネージャーに対して、強制的に身柄を拘束して取り調べる「刑事強制措置」が取られた。選手ばかりでなく、中国サッカー協会全体の組織ぐるみの犯罪だったことがわかる。永久追放された選手のなかには、金敬道、郭田雨、顧超といった元中国代表選手の名前もあり、サッカーファンに衝撃が走った。

 特に、この発表の5日前の9月5日に埼玉スタジアムで行われたワールドカップアジア最終予選の対日本戦では、遠藤航や三笘薫、南野拓実らにゴールを決められ、中国チームは0―7と惨敗。中国のSNS「微博(ウェイボー)」には「屈辱的だ」とか、「中国サッカー界にとって最も恥ずべき日だ」とのファンの投稿が掲載されるなど、中国代表の大敗がトレンドとなり、6日午前までに閲覧数は4億6,000万を超えたほどだ。

 その5日後には今回の中国サッカー界を揺るがす八百長、賭博事件の発表があり、これを報じた中国国営新華社通信が「負けることは許されるが、『腐敗』は許されない」と批判する異例の記事を配信した。さらに、この日、大連で行われたサウジアラビア戦でも、中国は1-2で逆転負けするなど、中国サッカー界にとっては、二重、三重の衝撃となり、もはや立ち直れないほどのダメージを負ったといえよう。

サッカー界高官が軒並み逮捕

 実は、腐敗捜査はすでに2年前から始まっていた。22年11月に中国男子サッカー代表チームの李鉄・元ヘッドコーチが逮捕されて以来、中国サッカー界では汚職に関与した9人が有罪判決を受けている。李鉄氏が受け取ったとされる金額は約1億2,000万元(約24億円)とされる。

 続いて23年4月、中国共産党直属の捜査機関である党中央紀律検査委員会と中国国家監察委員会が「重大な紀律違反と法律違反の疑い」を理由に、中国のスポーツ界を統括する国家体育総局のナンバー2で、中国サッカー協会トップを兼務していた杜兆才・同総局副局長を逮捕した。杜氏は、4,341万元(約8億6,820万円)あまりの賄賂を受け取ったとして党籍はく奪などの処分を受け、今後、量刑が決定される。

 また、今年3月26日には、3件の判決が言い渡された。中国サッカー協会の元会長である陳旭遠氏は8,103万元以上の賄賂を受け取ったとして終身刑、中国サッカー協会の元副会長である于洪辰は懲役13年、元事務局副事務局長で元代表チーム管理部門のディレクターである陳永亮は懲役14年――との量刑を下されている。

 今年8月には、中国サッカー協会の元副会長である李玉儀氏が賄賂を受け取ったとして懲役11年と罰金100万元の判決を受け、同協会競技部の元部長である黄宋氏も懲役7年、60万元の罰金、武漢サッカースポーツ管理センターの元所長である溥翔氏も横領、贈収賄の罪で懲役11年と罰金140万元の刑を宣告されている。成都サッカー協会の元会長兼事務局長であり、中国サッカー協会の執行委員会の元メンバーである顧建明氏は横領、贈収賄の罪で6年の懲役と40万元の罰金を言い渡されている。

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