進次郎は「中身がないイケメン」高市早苗は「関西なまりで庶民的」…テレビ局ADたちが見た「総裁選」舞台裏

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「一番引いたのは番記者のはしゃぎ具合」

 どこの局でも候補者たちが局入りをすると、控室に報道担当の役員はもちろんのこと、会社のトップも待ち構えて挨拶をするケースが多い。ご存じの通り、放送局は免許事業でもあり、NHKの予算は国会の承認が必要であり、政治家の顔色は気になるだろう。“ご挨拶”の際には玄関からADが露払いをしながら進み、そして候補者とその局の担当記者、いわゆる番記者が並び入ってくる。秘書官やSPなども鈴なりになるので、まるで大名行列のような光景だ。

 あるADは「一番引いたのはうちの局員の番記者たち。なんか担当の政治家を連れて社長の前に行けるのがよほどうれしいのか、無茶苦茶張り切っていて。偉そうに私に指示して、もう大はしゃぎ」。別のADは「局の幹部がそろって頭を下げて送り迎えをして、にこやかに談笑しているのを見ると、総裁選そのものが茶番に見えてくる。調子よくどの候補にもヨイショしている姿は、ADに対する普段の姿とは別人のようだった」という。

ADたちの視線から見るお祭り騒ぎの空虚さ

 ADたちの言葉からわかるのは、彼ら、彼女らがこのお祭り騒ぎを冷静に見ていることだ。ADは政治の専門家ではなく、日々芸能ニュースから国際ニュースまで幅広く仕事を振られる。だからこそ、国民目線でこの騒ぎを冷静に見られるのだ。

 それに対して、テレビ各局の今総裁選の報道の仕方はいかがだろうか。9人が連なって各局を渡り歩く。同じような質問がどこの番組でも繰り返されていくだけ。時間が無くなり、「おひとり30秒でお願いします」とワンフレーズで説明をさせる始末。これで何が国民に伝わるのだろうか。一方的な主張の垂れ流しでしかない。

 つまりテレビ番組こそが、自民党の「総裁選電波ジャック」に乗せられているのではないだろうか? 思い出すのは、2005年、小泉元環境相の父、純一郎氏が首相の時代に「郵政解散」と銘打ち、郵政民営化に反対する自民党議員を公認せず、「刺客」として対立候補を次々と立てたことだ。これが話題をさらい、テレビ各局はその構図に則った報道を繰り返した。結果、刺客は次々と当選し、自民党も圧勝した。小泉元首相にテレビ局がまんまと利用されたこの現象の危うさは、後に多くの識者が厳しく指摘している。しかし、この約20年前の過ちを、今の若い政治記者たちは知らないのだろう。

 自民党の総裁選はAKBの総選挙と同じであってはならないのだ。もちろん党員以外に投票権はない選挙であるが、この状態が続けば、今秋にも行われることが予想される衆院選において、自民党は国民から手痛いしっぺ返しを食うだろう。そしてその批判の矛先は、当然、空虚な報道を垂れ流したテレビ各局にも向かうはずだ。

多角一丸(たかく・いちまる)
元テレビ局プロデューサー、ジャーナリスト

デイリー新潮編集部

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