中国SNSに書き込まれた“異例の反応”とは? 「日本人学校10歳男児刺殺事件」に猛反発の声

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治安が良いはずの南山区で

 広東省深圳市で発生した日本人男児の襲撃事件は、治療の甲斐なく命を落とすという痛ましい結果となってしまった。事件の発生は18日午前8時頃。同日午前には森屋官房副長官が会見で事件を明らかにしたが、詳細が一向にわからない状況は日本の不安を大きくするばかりだった。

 一方、中国国内では同日午後に管轄の公安局(警察)の発表があるまで公的には“無音”が続いた。ただし、中国のSNS上では日本の報道を引用した動画が公開され、公式発表前から事件は周知されていた。折しも18日は、93年前に満州事変のきっかけである柳条湖事件が起こった「国恥の日」。反日感情を煽りやすい関連行事の様子と、日本人男児襲撃の情報が混在するSNSでは、地元ユーザーのコメントにも困惑がうかがえる。

 広東省の南、香港と接する深圳は経済特区として発展し、製造拠点のハブとして、近年はIT拠点としても注目され、日本人を含む外国人の往来が増加した。だが、元は小さな村が点在する地域で、現在の住民はほぼ外地(他の地域)からの移住者だ。

 出稼ぎ労働者も多く、彼らが帰省する長期休暇前は目先の金目当ての窃盗事件が多発する一方、居を構えて根を下ろすには堅実さと経済的な安定が必須。特に中心部は経済的な成功者が多く、近年は治安も維持されているとみられていた。経済状況の悪化で最盛期とは状況が異なっているものの、事件の現場は治安が良いはずの南山区だった。

「この種の『愛国心』は国に混乱をもたらす」

 6月に蘇州で日本人学校バス襲撃事件が発生した際、「デイリー新潮」は中国SNSにあふれる「日本人学校に物申す」系動画の存在を報じた。旧知の通り、中国SNSでの「反日」は再生数稼ぎに最適のテーマであり、日本人学校も数年前からその1つとなった。

 ただし、靖国神社動画のような破壊行為でなく、「学校の数が多すぎる」「中国人が入学できないのはおかしい」「なぜ警備が厳重なのか」といった“疑問”を提起するスタイルが大半だ。配信者が校門前でお決まりの“疑問”を繰り返し、時には守衛と言い争うが、そもそもその“疑問”は中国国内でもネット検索で答えが得られる内容ばかりだ。

 そうしたお手軽な「愛国」動画が登録なしで確認できる中国SNSとして、TikTokの中国版・ドウインがある。今回の事件についてもいち早く動画が公開され、様々なコメントが飛び交った。容疑者の動機に対する関心が深いのは日本と同様だが、これまで公開された「反日」動画の影響からか、多くのユーザーは「愛国」が動機だと考えているようだ。

「彼らが宣伝した悪がついに花開いた」
「我々の同胞の多くが日本にもいるという事実を考えてほしい」
「少しの前の亜人事件も然り、この種の『愛国心』は国に混乱をもたらす」
「法に基づいて厳罰に処すべきであり、この風潮が傲慢になりすぎてはならない」

「亜人事件」とは今月7日、北京の名所・円明園でインフルエンサー「亜人」が日本人観光客2人とガイドに執拗に絡み、暴言を吐いた事件を指す。この件も議論を呼び、「良い愛国」と「悪い愛国」の線引きを進めたようだ。香港メディアのオピニオン記事によれば、亜人を支持したのは一部の「脳なしの愛国主義者」だけだったという。

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