【検証】令和の米騒動は本当に「テレビが煽ったから」なのか? フジは積極的に報道…冷静だった2つの局は

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米不足を煽っているのは誰か?

 以上、見てきたように、テレビでは濃淡もあるものの、どの局もかなり抑制的に報道していたということができる。

 テレビ報道そのものの影響力は、かつてと比べて低下の一途をたどっている。インターネットおよびSNSが全盛の現代、テレビ報道で煽られて米の買いだめに走る……ということは、実際には稀だろう。テレビ各局もこの10年あまりの間で、消費者の行動に悪い影響を与えないよう注意を払うようになった。それが各局の「慌てる必要はない」という安心情報も併せて伝える姿勢に見て取れた。

 だが難しいのは、テレビの映像や発言が「切り取られ」、ネット上に拡散される時代でもあることだ。

 テレビでは10分20分かけて放送されたものが、1枚の画像、10秒足らずの映像に加工され、ニュアンスが伝わらないままでSNSで拡散してしまう。テレビ報道も「Xのつぶやき」などをそのまま引用するケースが多くなっている。今回チェックしたニュース番組でも、フジの「イット!」は「Xのつぶやき」を頻繁に取り上げ報道していた。結果、消費者インタビューなどの“不安の声”が、テレビ→SNS→テレビ→SNSと、どんどん拡大し、拡散されていく。“不安の声”がテレビとSNSで“無限ループ”する構図だ。そして、それを押しとどめる力はもはやテレビにはない。ネット時代に、異なるメディア同士が共鳴する現象を「間メディア性」と呼ぶが、この傾向はますます進んでいることがわかる。

 まとめると、米騒動を招いた要因はテレビかと言われると、そうとは言いきれないものの、テレビがその材料を与えていることは否定できない、ということになる。ただ繰り返しになるが、不安を煽らない形での報道を、各局もこれまで以上に注意している。SNSの時代に、かつての主要メディアたるテレビはどう伝えていけばいいのか。まだ正解がない課題の難しさを改めて見せつけた“令和の米騒動”の報道であった。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

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