【検証】令和の米騒動は本当に「テレビが煽ったから」なのか? フジは積極的に報道…冷静だった2つの局は

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TBSと日本テレビは?

 フジと同じように“令和の米騒動”というフレーズを用いて報道したのが、TBSと日本テレビだ。

 TBSはフジと違い、“令和の米騒動”という言葉をことさら強調していた印象はなかったものの、ニュース番組の「Nスタ」「news23」、情報番組の「情報7daysニュースキャスター」「THE TIME,」「ひるおび」等で、米の品薄や価格高騰を伝えていた。

 こちらも農水省や専門家の見立てを紹介しながら、消費者に買いだめに走らないように注意を喚起する作りだった。いずれ価格が落ちつくことを繰り返し強調してもいた。少しユニークだったのは、9月10日の「THE TIME,」で、米を節約するメニューを紹介していたことだ。大根メシ、もち麦、オートミール、とうもろこし、白滝、豆腐などを「かさ増しごはん」として伝えていた。

 対して日本テレビは、フジ同様に“令和の米騒動”というわかりやすいフレーズをさかんに使っていた印象だ。

 日テレは情報番組「DayDay.」や読売テレビ制作の「情報ライブ ミヤネ屋」、ニュース番組「news every.」「news zero」で、“令和の米騒動”を繰り返し伝えていた。筆者が注目したのは、9月3日の「DayDay.」だ。米不足、購入制限や値上がりの現状などを伝えた後で、テレビで伝える際の「難しさ」を、出演者たちがスタジオで率直に話していた。

(山里亮太キャスター)「ない、ないってテレビとか見て、こうやってみんなが早く買うってことをやっているから、けっこうこの情報の届け方が、偏って届けたせいでこの現象を生んでしまったんじゃないかなと思うと、ちょっと怖いなと思うんですけどね」

(ヒロミ)「うちのママも言っていたから(米は)スーパーからないよ」

(アンミカ)「実際、本当にないんですよ。(スーパーとか行くと)。ないってことは不足しているのかなって思いこんじゃうんですよ。ニュースとか見ていて。でも不足しているわけじゃなくて、『少ないだけですよ』って聞いたら。頭ではわかっていても、ここ最近震災とかもあって、『念のため備蓄』なんて言って、あるうちに急いで買っちゃうと今度それで値段が上がっちゃって。矛盾はわかりながら、しかも来年になったらいっぱい備蓄しちゃっているから、買わなくなって余っちゃうんじゃないかって思うから、今、正しい情報を知って、冷静にならなくちゃっていう気はしています」

(山里)「そうなんですよ。『米不足、危ないですよ』みたいなことをやっちゃうと、こういうことを招いてしまう」

 ここで武田真一キャスターが、農水省の担当者に聞いた情報をまとめて伝える。

「農林水産省はこれから新米がどんどん入っている。10月頃には米の在庫も増えてくる。価格も下がってくる可能性もあるんじゃないかなとしながらも、値段は需給の関係なので社会状況などによって変動するので落ちついてくるとは明言できないそうです」

(山里)「さきほどアンミカさんが言っていたようにちゃんとした情報を取得すれば、あんなたくさん買って…と急な需要を生んで、じゃあ、価格高くしようとはならないわけですね…」

(アンミカ)「私たち消費者の行動ひとつで値段の変動に影響するんだなって…。守りたい存在があるとつい、そうしてしまいたい気持ちもわかるんですけど、大事ですね」

 山里キャスターの言葉などを聞く限り、テレビはかなり抑制的に、不安な気持ちを煽らないよう注意しながら報道しているといえた。

“令和の米騒動”の報道に批判的? テレビ朝日とNHK

 テレビ朝日は、情報番組「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」「大下容子ワイド!スクランブル」や、ニュース番組「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などで、米の品薄や価格高騰について伝えていた。だが、“令和の米騒動”という表現はできるだけ避けていた印象を持った。

 8月20日の「グッド!モーニング」でこの問題を報じていたが、“令和の米騒動”と報じる一部メディアもあると触れつつ、農水省は「ひっ迫していない」と見ていると伝えた。「在庫量が少ない」という情報が独り歩きしていること、南海トラフ巨大地震の注意情報で必要以上に購入備蓄する人が急増したことで品切れ状態が続いているとして“令和の米騒動”を強調する他のメディアとは距離を置き、むしろやや批判的に伝えている。

 テレ朝では「米不足」「価格高騰」など、テロップでもできるだけ正確な表現に努めていた。また、大阪府の吉村洋文知事が備蓄米の放出を政府に要請したことに対する、農水大臣の反応、それに対する知事のコメントなども詳しく報じている(8月28日「羽鳥慎一モーニングショー」)。他局ではここまで詳しいものはみられなかった。

 生産者に焦点を当てて伝えようとする姿勢も感じられた。米農家の苦労や悩みにもフォーカスし、米の価格は生産者の苦労に見合ったものとはいえないのでは?と視聴者に問う。JA全農あきた運営委員会会長が「現場に行くたびにもう農業をやめるという声が本当に多いです。聞いていてつらいです。どうか米価を上げて少しでも農家の思いに応えたい…」と涙ながらに訴える場面を伝えた9月5日の「大下容子ワイド!スクランブル」がその典型だ。

 テレ朝の報道を見ていると、米問題の仕組み(日本の米政策)の複雑さを詳しく知るがゆえに、“米騒動”として、どこか茶化すような姿勢に与するのは避けたいという意識が感じられる。筆者が調べたところ、テレ朝の放送では、他メディアに言及するケース以外で“米騒動”という言葉を使用していなかった。

 とはいえ、テレ朝も、米の品薄や価格高騰などの取材先はフジや日テレ、TBSなどとほぼ同じだ。また、ニュース記事のネット配信記事(ABEMA NEWS)では「令和の米騒動」という言葉を使っていることは注記しておきたい。やはり「わかりやすさ」という点では、代わる言葉が見当たらないのかもしれない。

 その点、NHKは“令和の米騒動”という表現を一切使っていない。あくまで米の「品薄状態」と、“不足”という表現にとどめている。8月24日「サタデーウオッチ9」などで、店頭では品薄状態になっていることや今後の出荷の見通しなどを伝えていた。

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