「生きているだけで悲しいのはなぜだろう」 俳優・藤原季節が振り返る、東京で出会い別れた人々

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「生きてるだけで悲しい」という旧友の言葉

「his」「佐々木、イン、マイマイン」などの出演作で知られる俳優の藤原季節さん。大学進学を機に故郷・札幌から上京し演劇と出会った彼が、東京という街で出会い別れたたくさんの人たちのことを思いながら、いま、紡ぐ言葉とは。

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「俺、悲しいんだよね。なんでか分からないけど、生きてるだけで悲しい」

 中学1年生の時、友人がふいに放った一言。彼の言葉は、何年たっても忘れられないほど、僕に強い印象を残してしまった。現在彼は、営業マンとして札幌で働き、家庭を築いている。もういまでは、こんな言葉を覚えているのも僕だけかもしれない。

 ねえ、あの頃のお前に聞いていいか? どこからやってくるんだ、この悲しみは。生きているだけでこんなにも悲しいのはなぜだろう。

 思えば、この心もとなさを、僕はずっと抱えて生きてきた。故郷の札幌でも、どこにも居場所を感じられなくて、僕は東京という街に流れてきた。そしたら急に、母の作る料理が恋しくなった。失って初めて分かることが多すぎる。

過去の自分や過去の出会いを忘れながら、生きていく

 東京で、僕は演劇に出会う。せっかく進学した大学では、演劇にのめり込んですぐに単位を落とし、留年が確定する。借金をして、チケットのノルマ代を払う。何を食べていたのかも思い出せないけど、演劇を通して出会った仲間たちと飲む酒は、この湧き上がる悲しさを、ほんの一瞬にせよ忘れさせてくれた。

 なけなしの金で、安酒を浴びるように飲む。朝、目が覚めた時、頭痛はひどいし財布もすっからかんで絶望的なのに、リスクを背負って誰かと全力でコミュニケーションを取った自分を誇ってあげたくなる。

「お前は全力で生きているよ」

 忘却だ。忘却を繰り返して、なんとか前に進むんだ。誰かと出会っては、別れ。出会って、別れ。それにしてもなんて人が多いんだ、この東京って街は。人と人との関係がひしめいて、うごめいている。札幌は小さな街だった。たった一度の縁が、ずっと続いていく街だった。大通ススキノ札幌駅、その一帯を人々は「街」と呼ぶ。遊ぼうと思ったら僕たちはその街に出るしかない。街が一つしかないということは、はじかれた者は、その街では暮らせないことを意味する。それがどうだろう、東京は、どの街から逃げても逃げても、新しい街がある。新しい出会いがある。その度に、過去の自分を忘れたり、過去の出会いを忘れたりしながら、新しい仮面をかぶって生きていく。ペルソナの僕。けれどもペルソナの自分を生かそうとすればするほど、僕の中の何かが死んでいくのを感じた。

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