今季はセ・パ両リーグで「ホームランが1000本に届かない」可能性も…通算306本塁打のレジェンドが挙げた「ボールではない投高打低の“真犯人”」とは

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バットの軽量化

 一体、NPBで何が起きているのか。現役時代に通算で306本のホームランを放った、野球解説者の広澤克実氏に取材を依頼した。

「私も選手の声を聞いていまして、どうやら『バットの芯に当たると普通に飛ぶ』ようです。NPBはボールが納入される前に6ダース分を無作為に抽出し、反発係数の検査を行っています。検査はコンピューターも使われた厳正なものです。シーズンごとにホームランが減少していることも考え合わせると『今季だけボールに不具合が生じた』という可能性は低いでしょう。私はボールではなく、原因はバットにあると考えています」

 広澤氏は現役の時、アオダモという木で作った、長さ34インチのバットを使っていた。

「今のバッターは、メイプルかバーチという木で作った、長さ33・5インチのバットを使うことが増えてきました。理由は軽量化です。アオダモよりメイプルやバーチは軽く、さらに私のバットより0・5インチ短い分、より軽くなります。なぜ今のバッターは軽いバットを選ぶのかと言えば、ピッチャーの球速が年々、速くなっているからです。昭和のプロ野球では150キロが速球派の代名詞でしたが、今は150キロを投げるピッチャーは普通です。速球には重いバットでは対応できないので軽くするわけですが、この際、飛距離が犠牲になってしまいます」(同・広澤氏)

短いバットの長所と短所

 広澤氏によると「バットの長さが1インチ変わると、飛距離は数メートルの差が出る」という。例えば大谷は今季、34・5インチのバットに変えて話題を集めた。昨季より1インチ長くしたのだ。

「ホームランを打つための条件の1つに、スイングスピードの早さが挙げられます。フィジカルが傑出している大谷選手は、長い34・5インチのバットでもスイングスピードは速い。さらに長いバットで遠心力が増しますから、少し真芯を外してもホームランになる可能性が出てくる。一方、日本のバッターは軽いバットを選ぶことでスイングスピードは維持できますが、遠心力の減少もあって数メートル手前に落ちてしまいます。真芯に当たればスタンドに入りますが、少しだけでもズレたり、体を泳がされたりすると、フェンスの手前で失速してしまうわけです」(同・広澤氏)

 ホームランが減少している理由は、バットに当たった瞬間に生じるボールの初速を見ても分析が可能だという。

「大谷選手の場合、190キロや180キロといった数字が出ます。一方、日本のプロ野球だと村上選手や岡本選手といったホームランバッターでさえ170キロ台です。その他の選手は平均して160キロ台に留まっています。日本のバッターがボールの反発係数を充分に活かしきれてないのは明らかで、やはり日本のプロ野球は“投高打低”であり、ピッチャーにバッターが抑え込まれていることが浮き彫りになります」(同・広澤氏)

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