セの覇権争いは巨人と阪神…球審とにらみ合い「岡本和真」の気概は今日からの6連戦に不可欠【柴田勲のコラム】

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無四球が初勝利につながった巨人・赤星

 それにしても一個の四球の怖さ、それを改めて思い知らされた一週間だった。

 11日、マツダでの広島対巨人3連戦の2戦目、巨人は先発のアドゥワ誠、続くテイラー・ハーンの前に8回まで3安打無得点、2点差で負けていた。

 9回からは栗林良吏がマウンドに上がった。2点差で絶対の守護神・栗林だ。ここで勝負あったと思ったが、代打・中山礼都に四球を与えると、続く丸佳浩にも四球、これで完全に歯車が狂った。

 これから左前打、死球、左前打、四球……1死も取れずに24球でマウンドを降りた。巨人は一気に攻めて9得点で逆転勝ちした。煎じ詰めれば中山へのストレートの四球だった。こんなことはちょっと考えられない。大げさに言えば奇跡みたいな勝ち方だ。逆に栗林にも、広島にとってもあまりにもショッキングな負け方だった。

 この3連戦、どちらかの2勝1敗と踏んでいたが巨人が3連勝、11日の勝利は巨人が優勝したら「あの試合だった」と振り返る分岐点となった。

 16日の中日戦で巨人の先発・赤星優志が9度目の先発で初勝利を挙げた。6回を被安打3で1失点だった。特筆すべきは打者20人に対して無四球だったことだ。ストレートでグイグイ押して、なにより制球力が良かった。ストレートが良いから、変化球が生きた。

 無四球が初勝利につながった。

なんといっても打線は岡本和頼み

 何度も言ってきたが、4番が打てば勝つ。ことに巨人の場合はその傾向が強い。広島3連勝のあと、最下位のヤクルトに2連敗したが、中日に2連勝。岡本和真の2試合連続本塁打が効いた。

 岡本和は凡退してベンチに帰ってくる時、悔しさを表情に出さない。淡々とやっている、鬼の形相とまではいかないが、もっと気持ちを前面に出せばいい。そう思っていたが、14日のヤクルト戦でチャンスに3球三振に倒れると、判定に不満があったのか、球審とにらみ合った。岡本和にしては珍しいシーンだった。

 ヤクルト2連戦、主砲としての責任を感じていたのだろう。なんといっても打線は岡本和頼みだ。もっと気合を見せて、最後の力を振り絞ってオレが決めてやる、そんな気概でやってほしい。

菅野の中4日、中5日は回避すべし

 投手陣では戸郷翔征が頼りだ。菅野智之が15日の中日戦で3年ぶり4度目の中4日登板をした。6回途中まで投げて勝ち負けがつかなかった。

 それなりに投げていたが、やはり危なっかしかった。前回が57球とはいえ34歳、疲れがあったのだろう。慣れていない。次回に関して中4日、中5日なんて案があるとしたら、やめておいた方がいい。

 さあ、18日からは勝負の6連戦、次回の今コラムでどんな話ができるか。もちろん、巨人にとっていい話であることを願っている。(成績などは16日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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