「怒られるのが苦手」な精神科医・尾久守侑がラーメン二郎に挑戦 突如覚醒した能力とは
突然覚醒した文脈把握能力
「にんにく入れますか」
店主が私に聞いていた。
「全部で」
よく分からないが、そう答えておけば大丈夫そうなので隣の人のまねをした。間もなく到着した拉麺は、信じがたい量のもやしが山を形成しており、到底人間に食べ切れる量ではなかったのだが、食べ残しをするとどうなるかしれないとおびえ、無我夢中で食べた。緊張から、なんの味も覚えていなかった。たぶんおいしかった。
怒られなかった、と安堵しながら家路に就く間、緊張の下で突然覚醒した文脈把握能力について考えていた。そもそも、私は幼少期から怒られるのが嫌で、なにかにつけ場の文脈に敏感に過ごし自分を消して適応してきた。しかし、そんな自分のままでいいのか? そろそろ怒られても自分の意見を曲げない大人になるべきじゃないのか?謎の青年“二郎”の声が私の耳に響いていた。
「にんにく入れますか」
店主が私に聞いていた。
「あ、はい」
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