スーパーに大行列の恥ずかしさ… 米の「パニック購買」は防げたはずだ

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「米騒動」と呼ぶべきなのか?

 こうした状況もさることながら、買いだめも米不足に拍車をかけた。8月8日、宮崎で最大震度6弱の地震が発生したことにより、南海トラフ地震の緊急時備蓄用の購買ニーズが高まったのだ。これで、8月上旬より店頭から徐々に米がなくなったのである。

 そして、お盆の頃から“令和の米騒動”報道が加熱し、都市部でのパニック購買に繋がった。8月26日、大阪の吉村洋文府知事による農水省への備蓄米放出要請も、消費者の危機感を煽り、パニック購買を加速させた要因だろう。結果、私が8月末に目撃したような米を求める行列が、大都市圏を中心に散見されたのである。

 吉村知事がいう備蓄米とは、日本の年間の米総需要700万トン前後に対して、14%程度の約100万トンが国によって備蓄されているものをいう。これは、10年に1度の大凶作や2年連続の不作にも対応できるような量で、そもそも、今回のような一時的な品薄に対応する性質のものではない。

 前出、小川氏や同氏の著書『日本のコメ問題 5つの転換点と迫りくる最大の危機』(中公新書)によれば、過去には2回の米騒動があったという。1918年の大正と1993年の平成の米騒動だ。

 平成の米騒動は大不作が原因だった。当時は備蓄米の制度がなく、騒動の要因となった。これをきっかけに備蓄米制度が誕生したわけだが、今回は備蓄米も含めれば、国全体として米が不足していたわけではないのだ。

 こうした経緯を見れば、今夏の米騒動は都市住民が中心の「商店の棚にコメがないからどうにかして」というレベルにすぎない。過去のものと比べれば「米騒動」と呼ぶべきものかも怪しい。

反省すべき「パニック」

 実際、9月を迎えると、関東や九州からの新米が入荷されはじめた。9月中旬以降には、新潟や東北、北海道など米の産地から納品もされる見込みだ。パニック購買が起こらなければ、多少の欠品はあれど、新米の発売で対応できた可能性が高かった。

 今回のパニック購買は人為的に起こったことは間違いない。これによって需給のバランスが崩れ、結果的に米の店頭価格は3~4割上がった。適正価格より高い価格で消費者が米を買うハメになったのである。パニック購買が起きなければ、騒動には発展しなかったし、消費者も財布を痛めることはなかったのだ。これは反省すべき点である。

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