「自民党支持層」と「自民党員」で“世論調査”の結果が異なるのはなぜか 「高市」急伸「小泉」伸び悩み「石破」リードの結果から見える党員の怒りと悩み

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石破氏への根強い支持

 こうした傾向を党員に当てはめて考えると、一般の世論調査の結果で見えるほど小泉氏が党員支持を集められておらず、石破氏に根強い支持がある背景が見えてくる。

 石破氏は長年の政治キャリアの中で「与党内野党」としての認知度が高く、地方巡りの実績も多い。そのようなポジションゆえ、安倍政権下で育まれた「保守」を自認する党支持層からの反発もある。だが、日本テレビが9月3・4日に実施した党員調査では、「政治とカネ」の問題への不信感はむしろ党員「こそ」強く、自民党に「”政治とカネ”の法律厳守」や、いわゆる裏金関与議員への「非公認」といった厳格な対処を求める意見が強いことも明らかになった。こうした「怒れる自民党員」からの支持が、従来からの「転換」「刷新」の象徴である石破氏に向かっているようだ。

 かたや、小泉氏が掲げたライドシェア解禁などの「聖域なき規制改革」や「選択的夫婦別姓の導入」といった政策は、ライトな自民党支持層との親和性はあっても、中高年の男性中心で業界団体由来の加入も多い党員には受け入れにくい主張になっているのではないか。そのことを小泉氏や陣営も認識したのか、9月14日の公開討論会で、小泉氏は「政治改革」を主眼に訴えた。それ以降の演説会でも、解雇規制をめぐる問題や選択的夫婦別姓制度の導入に割く時間は減っているように見える。

 最新の9月14日・15日の朝日新聞の調査では自民支持層の支持率は石破氏で32%、小泉氏で24%だった。全体調査と比較すると小泉氏よりも石破氏の方がジャンプアップしており、小泉氏の勢いに陰りが見えていることが分かる。

 そんな小泉氏を党員支持で追い抜き、2位に浮上しているのが高市氏だ。

高市氏は選挙の顔になるのか

 9月3・4日に実施した日本テレビの党員調査で、高市氏を支持するとした人が挙げた「支持する理由」のトップは「政策に期待できる」(41%)だった。

 高市氏が「保守」的な政策を打ち出していることから「保守派」の政治家の象徴として支持されていることが数字にも表れている。その淵源は前回、2021年の総裁選で安倍晋三元首相の支持を受けて「保守派」を代表する総裁候補として戦い、善戦したことだろう。その意味では、高市氏の支持基盤はまさに安倍氏の「政治的遺産」かもしれない。

 しかし、高市氏のネックは果たして「選挙の顔」になり得るのか、未知数であることだ。各社世論調査では「次の自民党総裁」としての高市氏への支持は、石破氏や小泉氏に劣後することが多い。その原因は、高市氏が他候補より党派色やイデオロギーの強い人物と見なされており、野党支持層や無党派層からの支持調達があまりできていないからだ。

 新総裁・首相の選出後は、早々に衆院解散・総選挙の実施が見込まれるほか、来年夏には参院選や都議選も行われる。仮に自民党が「高市首相」のもとで選挙を戦うならば、高市氏には無党派層を惹きつけ、野党支持層を切り崩す立ち回りが求められるが、それはどこまで現実的なのだろうか。

 報道各社は自民党総裁選で議員票の動向を取材している。それらの報道を総合すれば、9月中旬の今なお、議員票のうちおよそ50~100人近くの動向が不明だという。議員は人間関係だけでなく「選挙の顔」となるのは誰か意識して投票するとも言われるが、上位を争うトップ3の各氏にはそれぞれの“アキレス腱”が見え隠れする。

JX通信社代表 米重克洋(よねしげ・かつひろ)
1988年生まれ。大学在学中の2008年に報道ベンチャーのJX通信社を創業。世論調査の自動化技術やデータサイエンスを生かした選挙予測・分析に加え、テレビ局や新聞社、政府・自治体に対してAIを活用した事件・災害速報を配信する『FASTALERT』、600万DL超のニュース速報アプリ『NewsDigest』も手がける。著書に『シン・情報戦略 誰にも「脳」を支配されない 情報爆発時代のサバイブ術』(KADOKAWA)がある。

デイリー新潮編集部

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