「お互いを醜悪だと思っている」夫婦 46歳夫が後悔する“交際ゼロ日婚”のなれそめ

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“友だちとして”会って、プロポーズ

 会っていろいろ話し、琢哉さんは暁代さんの人柄に魅了された。自分と同い年なのにひどく大人に見えた。彼女はさらりと、「うちは両親が離婚しているから、私は大人にならざるを得なかった」とつぶやいた。

「今の結婚式場に雇ってもらった恩義があるし、あそこでもっとやりたいこともある。だから転職は考えていないと言われました。じゃあ、友だちとしてまた会ってもらえないかと言うと、友だちとしてねと念を押されました」

 そして次に“友だちとして”会ったとき、彼はいきなりプロポーズした。結婚してほしい、と。免許証や貯金通帳、戸籍謄本も準備していってイタリアンレストランで見せた。暁代さんはひたすら面食らっているように見えたという。

「その店は、ときどき同僚たちと行っていたんです。店長がイタリアの人なんですが、何してるんだというからプロポーズしてると言ったら、めでたいめでたいと騒ぎ出して……。他のお客さんまで笑顔で祝福しはじめちゃった。暁代があわてて『私たち、会うの2度目なんですよ』と叫んだら、店長が『大丈夫、この人、いい人だよ。でもよくないことをしたら私が怒るから言って』って。そこへたまたま同僚がふたりやってきて、話を聞いてよかったね、よかったねと。彼女としては断れる状況ではなくなってしまった」

 暁代さんは「わかりました。受けます」と言ったものの、その場をおさめるために取り繕ったのだと琢哉さんは思った。おめでとうと言われながら、「これはフラれるな」と感じていた。だから店を出て彼女を送っていこうとタクシーを止めた時、「いいわよ、私。あなたと結婚しても」と言われ、面食らったそうだ。その間に彼女はタクシーに乗って去って行った。

「交際ゼロ日といっても、普通は友だち期間が長かったとか、少なくとも一緒に仕事をした期間があったとか、お互いの人間性を知る時間はありますよね。僕らは本当に何もなくて、結婚式の日と最初のデート、2度目のデート。それだけなんです。僕は本気だったけど、彼女が受けたのは冗談だろうとしか思えなかった」

慌ただしい新婚準備

 翌日、彼女から長いメールが来た。自分の長所と思われる点と短所と思われる点がユーモラスに表になっていた。そのセンスに琢哉さんはまた唸った。やっぱりこの人はおもしろい。一緒にいたい。

「僕にはセンスがなくて、こういう表を作れないからと、履歴書を送りました。つまらない履歴書で申し訳ないと付け足しました。そして結婚式をあなたの勤務先でしますかと尋ねたんです。すると結婚式をするつもりはないんだけど、どうですかって。実は僕もする気はなかったから大賛成と送って。その日、お互いに時間の都合がついたので、また会いました」

 お互いに賃貸住宅に住んでいることがわかり、新たに探そうということになった。ふたりが出勤しやすい場所で、間取りはこんなふうでとひとつひとつ決めていった。彼女は3日後にはいくつか候補を出してきた。

「ふたりで3つほど選んで見て、内見したその日にもう決めてしまいました。2度目のデートから1週間たたずに住む場所が決まり、10日後には婚姻届を出し、その数日後には引っ越しもすみました。ふたりとも2日ほど有休をとり、僕はその週末、片づけ続けました。彼女は週末が忙しいので、平日にがんばったようです」

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