「お互いを醜悪だと思っている」夫婦 46歳夫が後悔する“交際ゼロ日婚”のなれそめ

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(前後編の前編)

 人はどういう動機で結婚していくのだろう。恋愛が続いていく中で、そろそろ結婚という雰囲気になるのか、あるいはやっぱりこの人しかいないとか、子どもができたからとか、そういった現実的な理由で結婚していくことが多いのではないだろうか。そしてもちろん、結婚する瞬間は「一生、この人だけを愛していく」と決める人のほうが多いのかもしれない。

 結婚はロマンなのか、人には必須なのか、人生の選択肢なのか、さまざまな考え方もあるだろう。

「僕らはちゃんと話し合って結婚したレアなカップルだと思います。結婚生活の青写真は完璧だったんですけどね。やっぱり若かったのかなあ。今はお互いに醜悪だと思っているんじゃないかな」

 苦笑しながらそう言うのは、近森琢哉さん(46歳・仮名=以下同)だ。琢哉さんが結婚したのは29歳のとき。妻となった暁代さんとは交際ゼロ日だった。

「交際ゼロ日で芸能人が結婚したって、ときどき話題になりますけど、僕らは17年前にすでにゼロ日で結婚したんです……って、別に威張ることでもないんですが。お互いに結婚したい時期だったのかもしれません」

「感動しちゃった」出会い

 出会いは琢哉さんの友人の結婚式だった。暁代さんはその式場に勤務しており、当日の担当者だった。彼女の働きぶりは群を抜いていたと琢哉さんは言う。

「実は僕は、とあるサービス業の人事におりまして。ついつい人の働きぶりを観察してしまうのが癖なんです。暁代は身のこなしといい、笑顔といい、完璧でした。もちろん他のスタッフもみんな感じがよかったんですが、彼女には仕事を楽しんでいる余裕があった」

 その日、新郎側の親戚に幼い子どもが何人かいた。子どもは途中で飽きてしまい、その辺を走り回っていた。母親が気にして子どもを連れて会場から出ようとすると、暁代さんが寄ってきておもちゃを渡した。そこまでならよくある風景かもしれない。だが、彼女はその場にしゃがみ込んで一緒に遊び始めたのだ。

「ちょうど新郎新婦が両親に挨拶という、結婚式ならいちばん盛り上がるシーンだったんです。暁代はそれを鑑みたんでしょう。この場の雰囲気を崩さず、なおかつ子どもの関心を引くために自分ができることは何か、と。そういう対応はマニュアルではできない。この人は心からサービス業を楽しんでいるなと感動しちゃったんですよ」

 式が終了したとき、彼は暁代さんに話しかけた。あなたの仕事ぶりに感動した、と。ついてはぜひふたりで会ってもらえないかと懇願した。彼女はびっくりしたようだったが、「お客様とプライベートでは会えない」とやんわり断った。

「僕は式の出席者であって、客ではないと言ったんですが、彼女はありがとうございますと当たり障りのないことを言うばかり。やましい気持ちはない、とにかくあなたの仕事ぶりについて話を聞きたいと名刺を出しました。なんならうちの会社に引き抜きたいとさえ思っていたので。彼女はいぶかしげにしていましたが、翌日が休みだというので午後、カフェで会う約束をとりつけました」

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