「かかりつけ医に通う高齢者は必要なし」 マイナ保険証は本当に必要? 医師、薬剤師が徹底解説

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マイナ保険証のメリットも

 今年12月2日をもって現行の保険証は「廃止」され、「マイナ保険証」に移行する。その期限まで80日を切ったが、直近のマイナ保険証の利用率は約11%にとどまっている。切り替えるべきか現状維持か……分岐点に立つわれわれが知っておくべきマイナ保険証の「全て」。【前後編の後編】

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 前編【マイナ保険証を取得しないと本当にまずい? 「“切り替えなくて大丈夫”と伝えている」 医師が解説】では、マイナ保険証を取得するメリット、デメリットについて現役医師らの声を紹介した。

 では、実際に薬を処方する薬局ではどうか。

「マイナ保険証で呼び出せる1カ月遅れの情報は重要視していません」

 と、実務薬学総合研究所代表で現在も週2日ほど薬局に勤務する薬剤師の水八寿裕(みずやすひろ)氏は話す。

「マイナ保険証で薬や健診の情報を表示するのは結構手間がかかったりするので、それを見て対応するよりはお薬手帳を見た方が圧倒的に速い。また、常に来ている患者さんの情報は記録として薬局に残してありますし、他の薬局で処方されたお薬の情報もお薬手帳で把握できます。最終的にはご本人やご家族に確認もするので、漏れのようなものは基本的にないです」

 ただし、マイナ保険証は事務手続きの面では大きなメリットがあるという。

「マイナ保険証で受付してもらえると、保険番号などを手作業で打ち込む手間がなくなり、医療事務スタッフの負担が軽減されるので非常に助かります。また、事務スタッフの負担が軽減されると精算までの流れがスムーズになって、長い待ち時間が改善されるというメリットもある。ですので、私は基本的にマイナ保険証賛成派です」(同)

「アナログな方法でほぼ確認できている」

 東京都品川区にある秋津医院の秋津壽男院長が言う。

「同意があれば患者さんの医療情報をマイナ保険証で呼び出せる、ということに現状ではあまりメリットは感じていません。普段から患者さんへの啓発で、病院に行くときは過去のデータを持って行きましょうとか、飲んでいるお薬についてはお薬手帳か現物を持参しましょう、と伝えていますので、マイナ保険証に入っているデータは、すでにアナログな方法でほぼ確認できてしまっている状況です」

 ただし、会社員などにとってはメリットもあり、

「出張先で急に熱が出て知らない病院を受診する際とか、オフィス街にあるクリニックに1回限りでかかる場合には、マイナ保険証で見られるデータは便利だと思います。しかし高齢者の場合、そんなにあっちこっちの病院を渡り歩かず、かかりつけの病院に行くので、そうしたデータは必要ないですね」(同)

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