マイナ保険証を取得しないと本当にまずい? 「“切り替えなくて大丈夫”と伝えている」 医師が解説
「更新を忘れていてマイナ保険証が失効した場合…」
マイナ保険証を選択する場合、医療機関などにある顔認証付きカードリーダーにマイナカードを置き、保険証として登録すればすぐに現行の保険証の代わりに使うことができる。ただし注意が必要なのは、今の保険証は期限が来ると新しいものが送られてくるが、マイナ保険証の場合、5年ごとに自分で更新しなければならない点である。
「更新を忘れていてマイナ保険証が失効している、という状況になった場合、どんな対応をすればいいのか国側は決めていません。病院の窓口対応もかなり混乱すると思います」(前出・秋津院長)
一方、医療機関の窓口におけるマイナ保険証のメリットとしては、
「70歳から74歳までの高齢者の方は現在、窓口で保険証と共に高齢受給者証を出さなければいけませんが、マイナ保険証の場合、それが必要なくなります」(厚労省関係者)
「電子カルテと連携させてほしい」
政府広報ではマイナ保険証のメリットについて、
〈今までに使ったお薬の情報や過去の特定健診の結果を、本人の同意があれば医師や薬剤師などと共有でき、正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられます〉
としているが、この点、精神科医の和田秀樹氏は、
「私は特定健診や処方薬の情報は見たことがありません。電子カルテで見られるようになっていないので、診察していて“この人は薬がらみの問題があるんじゃないかな”と思った時には、お薬手帳を見せてもらうようにしています。政府も本当にマイナ保険証を普及させたいなら、電子カルテと連携させるとか、そういうことを整えてほしいです」
荻原氏(前出)は、
「政府は、マイナ保険証があればこれまでの医療情報が医者に共有されるので適切な診療が受けられるかのような言い方をしていますが、あれはミスリードだと思います」
として、こう指摘する。
「マイナ保険証にひもづいているのはレセプト情報です。レセプトとは、医療にかかる請求書で、どういう診療をし、こういう薬を使ったのでいくら請求しました、という請求書情報です。1カ月から3カ月前の古い情報で、検査をしたことは把握できても、その結果がどうだったのかは分からないのです」
先の井上氏によると、
「薬の情報に関してはお薬手帳のほうが便利です。薬で大事なのは、今、何を服用しているか。例えば、1週間前に歯医者さんに行って抗生物質を処方されたとか、そういうことを確認する必要があるのです。でもマイナ保険証の薬の情報は基本的に1カ月前までのものしか出てこない。それではあまり役に立たないので、お薬手帳で最新情報を確認することになります」
後編【「かかりつけ医に通う高齢者は必要なし」 マイナ保険証は本当に必要? 医師、薬剤師が徹底解説】では、マイナ保険証の意外なメリットなどと併せて詳しく解説している。