目黒蓮「海のはじまり」が20代より40代以上に“刺さる”深い理由

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セリフが心に刺さる理由

 一つひとつのセリフがこんなに刺さるドラマは久しぶりです。フジテレビ系の月9ドラマ『海のはじまり』。9月9日に放送された第10話の世帯平均視聴率は8.1%で、ここ5作の月9のなかではいちばん高く、それに、お気に入り登録者数や見逃し配信数も異例なほど多いので、かなり健闘しているといえるでしょう。

 ただ、Snow Manの目黒蓮(27)を主演に据えて、彼と同世代の若い世代に訴求しようとしたのだと思いますが、結果としてはアラフォーとか、想定よりも上の世代にもかなり受けているし、人生経験を積んでいる人にこそ刺さっているようです。オリジナルの脚本を書いた生方美久さんは1993年生まれと若いのに、人生がよくわかっていると感心させられっ放しです。

 このドラマは「人はいつどのように“父”になり、いつどのように“母”となるのか」がテーマだそうです。しかし、最初は「父」と「母」へのなり方に驚かされました。 目黒演じる月岡夏は印刷会社で営業職のサラリーマンで、百瀬弥生(有村架純)と3年以上付き合っていました。ところがある日、大学時代に彼女だった南雲水季(古川琴音)が病死したと知らされて葬儀に出席し、彼女が自分の娘を産んでいて、もう6歳になっていることをはじめて知らされるのです。

 番組のスタート直後に新聞に掲載された連ドラ座談会で、勝手に子供を産んでおいて、あとで突きつけられるようなシュールな状況にはついていけない、という趣旨の発言を読んだ記憶があります。若い人はそう感じても仕方ないと思うし、実際、自分の人生に置き換えたら、そんなことが起きるだなんて、だれだって想像したくないと思います。

 でも、想像を絶するような状況に追い込まれてこそ、人は悩み、苦しみ、考えます。そのとき、正解や真実なんてこの世にはないんだと気づかされます。二律背反する意見や要求のあいだで引き裂かれ、なにかを選ぶしかありませんが、選んだ結果が正解だったかどうかも、たぶん永遠にわかりません。でも、そうやって選択を重ねていくしかないのが人生です。

 二律背反した状況は、言ってみればどちらも真実で、古今東西、すぐれた文学作品はそうした状況を描いています。『海のはじまり』にも、それがあるように思うのです。

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