「わが家は狙われていたのかも…」ホストに狂った愛娘の“1800万円”を肩代わりした母の悲痛

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「悪質ホスト」問題を受け、東京都・新宿区歌舞伎町のホストクラブでは、今春より売掛金(ツケ払い)撤廃の動きが進んでいる。それでも、7月には女性客をあっせんしたホストクラブの幹部が逮捕されるなど、根本的な改善はほど遠いようにも思える。客に高額の売掛金を課し、無理を強いるホスト。そうした行為は、当事者はもちろん、時にその家族の人生までも狂わせてしまう(前後編の前編)。

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 八雲佳代さん(仮名、以下同)は、現在、一般社団法人「青母連」の活動に参加している。正式名称は、青少年を守る父母の連絡協議会。歌舞伎町を中心とする全国5拠点で、繁華街での声かけ、相談窓口の設置などを通じ青少年を守る活動を行う団体だ。「悪質ホスト問題」も、青母連の追及から社会問題化した。

 佳代さんが青母連に入ったきっかけは、当時20歳だった娘の彩菜さんが「ホスト沼」にハマったことだった。

「2022年の2月頃のことです。大学に入ってひとり暮らしをしていた娘が、とつぜん家にやって来たんです。今思えば、主人がいないタイミングを狙ったんでしょうね。『借金がある』というので、驚いてどれくらいか聞くと、『1000万円』と。あいた口がふさがらないとはこのことでした」

 当初、彩菜さんは借金の理由をなかなか明かそうとはしなかった。だが問い詰めていくと、歌舞伎町のホストクラブの売掛金であること、支払期限が迫っており代わりに払ってほしいことなどを口にした。

「なんでも、アプリで知り合った男が実はホストで、ずるずる店に通うようになったみたいなのです。とはいえ、当時は私もホストクラブの仕組みがよくわかっていませんでしたし、大金ですからね。じゃあ払います、とはすぐに言えなかった。そうしたら、娘が家を出て行ってしまったんです。『お金を払ってくれないなら死んでもいいのね』というLINEを残して……」

娘はどこへ行ったのか

 佳代さんいわく、娘の彩菜さんは「良くも悪くも真面目で、融通が利かない。高校時代に恋人は居たはずだけれど、世間知らず」。3日ほど連絡がとれなくなり、何をしでかすかわからないと心配は募った。

 彩菜さんはすでに成人している。警察が動いてくれるとは思えなかったが、ダメもとで所轄に相談すると、意外にも警察官は親身に対応し、彩菜さんから店名を聞き出していたホストクラブへ電話をかけてくれたという。「歌舞伎町のビルから若い子が飛び降りた事件があったりしたので、警察も放っておけなかったのでは」と佳代さんは見ている。

「そのタイミングで『警察なんて呼ぶなんて辞めてよ』と彩菜からLINEがありました。どうやら担当ホストの家に居たみたい。なんとか家に連れ戻したのですが、目も死んでいて、他人みたいでした。きっと親を巻き込んだことを彼女なりに恥じていたんだと思います。事の次第を知った主人は『土下座して謝れ』と大激怒でした」

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