「子どもにとって最大の謎は母親」 浅田次郎氏が絶賛するドラマ「母の待つ里」撮影秘話

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 帰る故郷も家族も持たない3人の孤独な男女に、奇妙な「ふるさと」への招待が舞い込む。気まぐれ半分でそれに応じた彼らと、東北の「ふるさと」で待つ「母」との不思議な交流を温かく、切なく描く異色の家族小説が『母の待つ里』だ。ドラマ化(放送はNHK BSにて9月21、28日21時~)にあたり、作者の浅田次郎さん(72)はロケ地となった岩手県遠野を訪問。

「イメージどおりの光景だ」。伝統的な曲がり家の縁側でほほ笑む女性を目にすると、そうつぶやいた。

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「二重三重に演技の説得力を求められる役」

 ドラマでは3人の男女を中井貴一さん(62)、佐々木蔵之介さん(56)、松嶋菜々子さん(50)。そして「きたが、きたが、けえってきたが」と彼らを迎える物語のキーパーソン、母「ちよ」を宮本信子さん(79)が演じる。自身のキャリア最高齢となる86歳の役柄である。

「今の年齢で演じられる最高の役をいただきました。ちよさんは相手によって違う顔を見せるだけでなく彼女自身のドラマも内に秘めていて、二重三重に演技の説得力を要求される。気を引き締めて臨むと同時に、思い切り自由にやろう、とも決めましたね」

 と宮本さん。実母の形見のチョッキを衣装に取り入れ、屋内の椅子の配置や写真を撮られる時の表情に至るまで、積極的に意見を出しながら人物像を作り上げたという。

浅田次郎さんも絶賛

「子どもにとって最大の謎は母親です。宮本さんは遠野の自然に溶け込みながら、それを見事に表現してくださっている。完成が待ち遠しい」と浅田さんが期待を口にすれば、宮本さんも「遠野には不思議なご縁があり、何度も呼ばれています。今回の出演もきっと早池峰(はやちね)の神様からのプレゼントですね」と応えた。

 演じるのは俳優だけではない。作中で「ちよ」が子どもたちに語り聞かせる昔話は、人形遣いの人間国宝・桐竹勘十郎さん監修の文楽で表現されるとあって、こちらの好演も見どころだ。

撮影・青木 登

週刊新潮 2024年8月8日号掲載

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