「腎臓に悪い?」「添加物だらけって本当?」専門家が解説する「プロテイン」の“基礎知識”と見過ごせない“注意点”

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高齢者ほどプロテインを

――運動しない人も飲んだ方がいい?

杉浦 普段の食生活でたんぱく質が足りていないのなら、運動の有無に関わらずそれは補給すべきですから、プロテインは飲んだ方がいいということになります。たんぱくが不足すると、筋力や体力の低下が心配されることは言うまでもありませんが、内臓や血液、骨、酵素、ホルモンなど、体内のあらゆるものがたんぱく質からつくられていますから、身体機能に広く影響する可能性があります。肌や髪への影響もあるでしょう。たんぱく不足の弊害の大きさを考えると、積極的に補給すべき栄養素であることは間違いないです。

 特に現代は、高齢者こそ、プロテインを摂取すべきだと言われます。コロナ禍によって問題が顕在化しましたが、運動量が落ち、また食事量も落ちてくることで筋肉量が低下し、要支援、要介護状態になってしまう高齢者は後を絶ちません。高齢になるほど食事の中でたんぱく質を確保するのが難しくなってきますから、これをプロテインで補うのは大事な考え方だと思います。

過剰摂取の危険性

――プロテインを飲む際の注意点は?

杉浦 やはり「摂りすぎ」には注意しましょう。先ほど「腎臓に疾患がない場合は気にする必要はない」と申しましたが、運動もせずに、推奨される量の何倍もの過剰なたんぱく質を一気に摂取したら、それは体に負担がかかるのは誰でもわかることですよね。肝臓や腎臓を介して尿素に分解される過程で、それぞれに負担がかかり、何かしらの疾患に繋がる可能性はありますから、過剰摂取には気を付けるようにしましょう。

 あるいは、プロテインにも、1回分(たんぱく質20g程度)あたりだいたい100~150kcalくらいのエネルギー量を含んでいますから、摂りすぎると単純に太る可能性もあるということは理解しておくべきだと思います。牛乳に混ぜて飲んだりするならばなおさらですね。プロテインはお腹にたまるので、よく言われる「一食分をプロテインに置き換える」というのはダイエットとして有効だとは思いますが、食事に追加するだけなら、摂取カロリーが増えていることは認識しておいた方がよいと思います。

〈第2回の記事【筋トレブームで大人気「プロテイン」の真実…「どれを選ぶか」「どう飲むか」を専門家が指南】では、一般人の適切なプロテインの摂取量や、製品の選び方、そして乱立するネット情報の見分け方などについて詳報している。〉

杉浦 克己(すぎうら かつみ)
立教大学スポーツウエルネス学部特別専任教授。博士(学術)。明治製菓で研究員、「ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ」所長などを経て、2008年より立教大学コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科教授に就任。複数の大学で講師を務めつつ、23年より現職。運動を通じた健全な発育や健康増進、パフォーマンス向上などに対し、栄養学的にアプローチすることを研究テーマとしている。近著に『一般教養としてのサプリメント学』(草思社/24年8月)。YouTubeチャンネル「杉浦克己教授のリアルスポーツ栄養学」(https://www.youtube.com/@Katsumi-Sugiura)でも栄養学に関する情報を発信している。

デイリー新潮編集部

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