「腎臓に悪い?」「添加物だらけって本当?」専門家が解説する「プロテイン」の“基礎知識”と見過ごせない“注意点”

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(全2回の第1回)

 フィットネスブームの到来とともに、常飲する人が増えているのが、たんぱく質を手軽に摂取できる「プロテイン」食品だ。今や薬局だけでなくコンビニでも、パック型の飲料や、シリアルタイプのバーなどが定番商品として並ぶようになった。調査会社の富士経済によれば、2013年には600億円ほどだった市場規模は、23年には2500億円を超えるまでに拡大。運動習慣のある人に限らず、幅広い支持を獲得しているのだ。

 一方、それだけ人気を博しているだけに、プロテインをめぐっては様々な疑問が飛び交う。

「腎臓に良くないの?」「危ない添加物が入っているの?」

 これまでプロテインに馴染みのなかった人にとっては、そもそもの安全性が気になるところかもしれない。あるいはプロテインに抵抗はないという人でも、

「運動しない人も飲んでいいの?」「どれくらい飲むのが適切?」「太る可能性は?」

 など、挙げればキリがない。ネット上で様々な立場からの情報が錯綜しているからこそ、結局のところ「何が正解なのか」が、はっきりしないのである。

 そこで、立教大学スポーツウエルネス学部特別専任教授で、過去にはプロテインブランド「ザバス」でも知られる明治製菓でプロテイン研究に携わっていた杉浦克己氏に、数々の疑問をぶつけてみた。研究者でありつつ、現在は子どもから高齢者まで幅広い層に栄養指導を行う立場から、一般向けの正しいプロテインの知識を伝授してくれた。

腎臓への影響

――プロテインはそもそも安全?

杉浦 特殊な食品だというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、プロテイン自体は安心・安全に摂取できるものと理解してよいと思います。たとえば牛乳からつくっている粉末プロテインなら、実は原料も製法も、赤ちゃんが飲む粉ミルクとほとんど変わらないんです。添加されている栄養素の種類でいえば、むしろ粉ミルクの方が多いくらい。きちんとした食品会社が、粉ミルクと同じ作り方をしていると考えれば、安全性はご理解いただけるのではないかと思います。

 現に、IOC(国際オリンピック委員会)が2018年、スポーツドリンクやエナジードリンク、ヨーグルトなどと同じ「スポーツフーズ」のカテゴリーにプロテインを入れました。比較的厳しい基準でチェックを行うIOCの研究者たちからも、身体機能に効能をもたらす安全な食品として認められているわけです。

 一部では、「腎臓に悪いのではないか」と懸念される方もいらっしゃるようです。まず前提として、腎臓に疾患がある方の場合、たんぱく質はむしろ制限しないといけない栄養素になるので、基本的にプロテインは「飲んではいけない」ということになります。しかし、腎臓に疾患がない方の場合は、適量のプロテインが腎臓を傷めるという科学的根拠はありません。疾患を抱えている方でない限り、「腎臓に悪い」ということは特にないと考えてよいでしょう。

 ただし、まれに「腎臓に疾患があるのに、それに気づいていない」という方も、中高年層を中心にいらっしゃいます。体のむくみや頻尿など、気になる体調の変化が出てきた場合は、プロテインを飲む前に、腎臓に疾患がないか医療機関を受診しておくことをおすすめします。

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