“90年代のヴィジュアル系人気で売れた面も…” DIR EN GREYのDieがフェルナンデス倒産に感じた「ロック衰退」の寂しさ

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衰えつつあるロックミュージック

 人気アーティストが使っているものと同じギターを、自分も持つことができる。その一点こそが、若年層の購買意欲を大いに刺激したポイントだった。

「僕が住んでいた三重の田舎の方でも、フェルナンデスを持っている人をよく見かけました。それを思えば、都市部にはもっといたんでしょうね」

 Dieさんによると、旧来の大物アーティストが長年にわたってフェルナンデスを使い続けている半面、近年は若い世代の使い手を見かける機会は少なくなっていたという。

「90年代はデビューするバンドも多く、ファンも含めてギターを買い求める人がとても多かった。でも、最近はロックミュージックそのものの勢いも衰えてきました。フェルナンデスは、時期的にヴィジュアル系バンドが全盛期にあったからこそ売れたという面があると思う。実際、ここ数年はTシャツにジーンズ姿という出で立ちの若いバンドマンがフェルナンデスを弾いているというイメージはほとんどありませんね」

品薄と円安による資材価格の高騰

 入門編としても多くの支持を集めたフェルナンデスにとって、新商品の売れ行きは、魅力あふれるギタリストの有無にも左右される。カッコ良いギタープレイがユーザーの心を捉えてこそとも言える。次世代を担う新人スターの不在が続けば、すでにベテランの域に入っている看板アーティストとの契約を維持するしかないが、彼らは新世代のファンへの訴求力に乏しく、新たな金看板の不在は経営的に重い負担と化していた。

 加えて、輸入木材の品薄や、折からの円安による価格の高騰というダブルパンチにも見舞われていた。

「ギター本体の大半は木材ですが、その素材となるローステッドメープルなどが不足しています。家具などの製造に優先して使われる木材なので、なかなかギター業界まで回ってこないとも聞きました。かつてのような、縞模様の虎杢(とらもく)のカッコいいギターを一本の木から切り出すことなど、もはや望めません。職人さんも不足していて、新しく注文しても2年ぐらい待たないと手元には届かないんです」

「ロックが変わればギターも変わる」

 中古市場を覗いてみると、インターネットの普及前に比べて中古ギターの入手は格段に容易になっている。入門編からビンテージまで品ぞろえは豊富だが、当然ながらここでの取引はメーカー側に恩恵をもたらすことはない。

 こうした事象が重なって、最盛期だった99年に40億円を突破していたフェルナンデスの売上高は、22年度には1億6,608万円にまで激減。2,000万円を超える赤字決算を記録した。昨年5月には、同社から分離・独立した楽器卸業の大阪フェルナンデスも破産している。

「やっぱり寂しいですよ。ロックが変わればギターも変わります。これからは尖ったヴィジュアルから、海外のフェンダー、ギブソンのような見た目がオーソドックスなタイプに中心が移っていくと思います」

 時代が変わればロックも変わる。かくしてロックスターから市井のギターキッズを魅了した日本の老舗ギターブランドは、自身が支えた時代とともに過去のものとなった。

デイリー新潮編集部

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