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最高裁の判断は

 刑事裁判と並行し、埼玉県を相手取って約6400万円の損害賠償を求めて起こした国家賠償訴訟は、一審、二審ともに棄却され、昨年7月上旬、最高裁に上告した。この裁判で原告は、地域住民への注意喚起が不十分だったことが事件の連続発生につながったとして、埼玉県警の責任を問いただした。加藤さんの自宅は3軒目に襲われたが、1軒目が被害に遭った時点で県警が適切な対応を取っていれば、その後の事件発生は防げたと主張しているのだ。しかし、立て続けの敗訴で、またしても司法への不信感が募った。

 最高裁の判断はまだ出ていない。

 原告が、上告審として受理するよう求める理由書を提出した昨年9月上旬から数えても、すでに1年が経過しており、平均審理期間の3ヶ月~半年を大幅に超えている。加藤さんが心境を語る。

「そろそろかなと気にはなります。遅れれば遅れるほど受理される確率が高まるとは聞いていますが、司法に対する信頼はもうありませんので、どうせ訴えても変わらないのではないか、という気持ちは少しあります」

 最高裁によると、上告申し立てが受理される確率はここ近年、2%以下と極めて低い。無力感に苛まれる一方で、連続発生について埼玉県警が責任を問われないのは、やはり腑に落ちない。このまま引き下がるわけにはいかないという悔しさも、公権力に抗う加藤さんの原動力になっていた。

「県警の幹部たちが裁判の中で本当のことを言っているようには到底思えないんです。市民の安全を守るべき警察がそんな態度でいいのか。彼らはいつか必ず、真実を話して罪を償う日が来るはずです。そう考えないと僕は精神のバランスを保てません」

 最高裁の判断はいかに。

 悶々とした気持ちのまま、加藤さんは今年の命日もまた、3人の骨壷が安置された寺で祈りを捧げる。

水谷竹秀(みずたにたけひで)
ノンフィクション・ライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊は『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)。10年超のフィリピン滞在歴をもとに「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材。2022年3月下旬から2ヵ月弱、ウクライナに滞在していた。

デイリー新潮編集部

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