美し過ぎる第1回世界陸上やり投げ女王「ティーナ・リラク」 “運命の6投目”で魅せた「大逆転劇」をプレイバック(小林信也)
躍進するアジア勢
翌84年のロサンゼルス五輪。リラクはもちろん金メダルを期待された。4年前のモスクワ五輪に続く2度目の出場。19歳の前回は14位タイだった。
やり投げ王国フィンランドは、男子では20年アントワープ、24年パリでヨニ・ミューラが連覇。32年ロサンゼルス、48年ロンドン、64年東京でも金メダルに輝いている。
だが、女子は48年ロンドンでカイサ・パルビアイネンが銀メダルを取っただけで優勝はまだ一度もない。それだけにリラクへの期待は大きかった。
迎えたロス五輪。男子やり投げはアルト・ハエルコーネンが優勝。フィンランドにこの種目6個目の金メダルをもたらした。
女子やり投げは、リラクとイギリスのテッサ・サンダーソン、世界陸上でも熾烈(しれつ)な優勝争いを展開したウィットブレッドらの戦いとなった。リラクは69メートル56を投げたサンダーソンを上回れず、69メートル00で銀メダルにとどまった。いずれも五輪新記録だった。
今回のパリ五輪では北口榛花が日本の投てき選手として初の金メダルを獲得した。一方、男子やり投げでも特筆すべき快挙があった。日本ではほとんど話題にならなかったが、パキスタンのアルシャド・ナディームが92メートル97の五輪新記録で優勝した。2位はインドのニーラジ・チョプラ。やり投げの優勝をアジアの選手たちが争った。新たな時代の到来を感じさせたパリ五輪でもあった。
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