悪しき「ゆとり教育」と戦った数学者の述懐 「『12×231』を解けない小学生」が流れを変えた

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〈前後編の前編/後編を読む〉【食塩水の問題】昭和から平成で中3の正解率が大幅減 数学を「暗記」で誤魔化してはいけない

 最近、教員不足の問題から採用人数を増やしたり、採用試験の前倒しなどのニュースが一気に増えてきた感がある。そして、「働き方改革」や「魅力ある授業」などの視点からも多様な意見が出されている。もちろん、それらは一考に値すると考えるが、歴史的に見た重要な視点が欠落しているとしか思えない。

 本稿では、その視点から「反省の上に立った教員採用計画」を訴えたい。

 30年ほど前の1990年代の半ばに、「経済成長を遂げた日本は、これからは文化だ」、「算数・数学は計算だから、計算機が発達した時代は必要性が弱くなった」と散々言われた。そして、後に「ゆとり教育」と呼ばれるようになった2002年(高校は2003年)から始まる学習指導要領では、とくに算数・数学では授業内容が見直され、授業時間が大幅に減ることになった。

世界最低レベルの事態に

 高度経済成長期の終りを告げる頃まで小学算数の全学年合計時間数は1,047時間あり、中学数学では420時間あった。それが「ゆとり教育」では算数が869時間、中学数学が315時間である。中学数学の授業時間は週3時間で、世界最低レベルである。高校数学に目を向けると、かつては文系でも1年生・2年生の合計必修単位数は9単位あったが、それが0単位になり、かろうじて選択必修として2単位が残ったのである。

 その流れに呼応するかのように、2000年前後の数学教員採用数は極端に減り、いくつかの県では高校の数学教員がゼロ採用にもなった。様々な面で優秀であった「団塊ジュニア世代」の新規採用が狙い撃ちされたのである。それどころか、「数学の教員はもはや役に立たない。教員室でのあなたの机はない。家庭科の教員免許を取ったら残してあげる」、などと校長から肩叩きされた才能ある数学教員が何人もいた。そしてテレビの情報番組では、家庭科の教員になった元数学教員が、エプロンを付けさせられて面白おかしく取り上げられたこともあったのだ。

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