「NARUTO」「ヒロアカ」「ガンダム」…日本アニメの「実写化」相次ぐ! ハリウッドが刮目「ONE PIECE」「SHOGUN」が打ち立てた“メガヒットの法則”

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「鉄板アニメ」のポテンシャル

 かつて海外マーケットの関心を惹く作品といえば、「攻殻機動隊」や「銃夢」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」といった“エッジ”の利いたSFモノか、あるいはニッチでマニアックな作品が好まれた。しかし今は「NARUTO」や「ヒロアカ」「進撃の巨人」「君の名は。」など実績に裏打ちされた“鉄板アニメ”が目立ち始めている。

 日本アニメの人気が世界的にかつてないほど高まっているのは事実だが、それでも海外には日本ほどアニメが一般に受け入れられていないところも少なくなく、「大人はアニメを見ない」といった地域もいまだ存在する。それら“フロンティア”に対し、実写化が「世界への扉」となることを期待する声は多い。

 一方で、この勢いは日本で制作したコンテンツが、海外市場で“台風の目”となり得る可能性も秘めている。Netflix の作品でもう一つ注目したいのは、23年下半期・総合ランキング(シリーズ)の「日本番組」で1位となった「幽☆遊☆白書」だ。制作したのは「ゴジラ-1.0」でもスポットライトが当たったROBOTである。

「幽☆遊☆白書」の“ブレイクスルー”のキーワードは「エンタメ作品」としての完成度の高さだが、「ゴジラ-1.0」も重いテーマを内包しながらも、目を見張るVFXを見どころとしたエンタメ化に成功。世界で愛されてきた「KAIJUゴジラ」のブランド力も相まって、アメリカで大ヒットを記録したのは周知の通りだ。

日本のコンテンツ産業の“夜明け”

「ゴジラ-1.0」や「SHOGUN」が得た高い評価は、日本映画が持つクリエイティビティが“武器”となることを示しており、予算と時間を十分にかけることができれば、世界と伍していくのは可能なことを証明した。今後は日本で制作した作品と、日本のコンテンツを題材に海外で制作された作品が競い合う「フラットな未来」が訪れると予想されている。

 取り巻く状況が目まぐるしく変わるなか、現在、課題として浮上しているのが日本の映画・ドラマの制作現場における「環境整備」だ。相応の制作予算の投下を可能とするシステムづくりも重要だが、「劣悪」とも称される制作環境の改善こそが「日本のコンテンツ産業の持続的な発展」を実現するカギになると指摘されている。

 その折りも折り、9月9日に総理官邸で岸田文雄首相も出席し、コンテンツ産業官民協議会とあわせて映画戦略企画委員会が開催された。映画業界のスタッフが持続的に働ける環境の整備と映画産業の強化に向けた方策を探るための話し合いの場が設けられたのだ。これは映画監督の是枝裕和氏らが中心となり、以前から発してきた問題提起に、ようやく政府も取り組む決意を固めたということで画期的な一歩といえる。

 海外だけでなく、国内でも吹きはじめた“追い風”を推進力として取り込めるか。官民をあげた「攻勢」に期待したい。

数土直志(すど・ただし)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に国内外のエンターテインメント産業に関する取材・報道・執筆を行う。大手証券会社を経て、2002年にアニメーションの最新情報を届けるウェブサイト「アニメ!アニメ!」を設立。また2009年にはアニメーションビジネス情報の「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ、編集長を務める。2012年、運営サイトを(株)イードに譲渡。2016年7月に「アニメ!アニメ!」を離れ、独立。

デイリー新潮編集部

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