伝統的な製法を完コピして、“本物”と同様にICタグまで内蔵…「偽ブランド品」のハイレベル化で質屋の廃業が続出「息子に継がせようとは思いません」

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ロレックス以外の偽腕時計が怖い

 質屋に持ち込まれる高級腕時計のなかで、突出して多いのがロレックスだ。デイトナやサブマリーナー、GMTマスターII、エクスプローラーなどの人気モデルは正規店で購入が難しいほど需要が高いため、必然的に融資額や買い取り額も高額になる。手軽に持ち運びができる点も、質草としての人気が高い要因だ。

 そんなロレックスは、スーパーコピーも年々精度が上がっており、「はっきり言って業者でも日々実物に触れていないとわからない」ほどの偽物が多く出回っている。

 だが、A氏は、「ロレックス以外の腕時計を持ち込まれたほうが、緊張する」と話す。

「ロレックスは偽物が多いので、僕らも身構えて相当丁寧に見るんですよ。厄介なのは、“まさかこんなブランドには偽物がないだろう”というブランドの偽物です。そんなブランドは、わざわざ偽物を作っても価格的に割が合わないように思うのですが……」

 具体的にブランド名を挙げると、数万円程度で新品が購入できるセイコー5や、オリエントスター、G-SHOCKなどの偽物だ。仮に質屋が買い取っても1~3万円ほどだが、たかが数万、されど数万である。痛手になることには変わりない。“まさか偽物はないだろう”という心理を、偽物を作る業者は突いてくるのだ。

 A氏は、プロの業者ですら見分けがつかない偽物が多い現在、素人がフリマサイトやオークションサイトでブランド品を買うのは、危険すぎると警鐘を鳴らす。実際、フリマサイトで買った偽ブランド品を本物と信じ、質屋に持ち込む人は多いそうだ。

“金”の偽物が出回っている

 また、近年目立つのが金製品の偽物である。2024年9月9日現在の金の店頭小売価格は、1gあたり1万2657円(税込、田中貴金属工業のサイトより)に達している。1万円をゆうに超え、歴史的な高価格となっている。そのため、金地金や金製品の偽物を持ち込む人が後を絶たないという。

 しかし、どの質屋にも金の成分を科学的に分析し、鑑定できる機械があるはずだ。しかし、A氏によると、そういった機械をも騙す偽物が出現しているというから驚きである。いったいどのようなものなのか。

「タングステンの表面に金をメッキし、金であるかのように偽装したものが出回っています。金と比重が同じなので機械が騙され、買い取ってしまう店が続出しているのです。さらに、天皇陛下の在位60年を記念し、昭和61~62年に発行された10万円金貨の偽物も多い。金貨が入っているブリスターパックもそっくりで、本当によくできているんですよ」

 10万円金貨は、製造された当時は地金にして4万円程度の価値しかなく、ボッタクリだと批判されたこともあった。ところが、現在は金の高騰によって地金の価格が10万円を遥かに上回っており、30万円以上で買い取っている業者も多い。

 10万円金貨はかつて大規模な偽造事件が起こり、社会問題化したことがある。忘れた頃にまたやってくるということなのだろうか。こうした偽金貨は3Dプリンターを使って作られたものもあり、表面の刻印から側面のギザまで、本当に良くできているのだそうだ。

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