プレミア記念切手が最盛期の「2割以下」で購入可能に…趣味の王様「切手収集」はなぜ衰退してしまったのか

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郵便料金値上げの一方で切手コレクターは減少

 先日、仕事で同席した10代の女性から「切手ってどうやって貼るんですか?」と聞かれた。裏面に糊がついているので舐めるか、水につけて貼るんだよと説明したら、「切手ってそう使うんですね! もしかすると私、初めて使うかもしれない……」と言われた。この女性のように、10代以下の層には切手を使ったことがない人が増えているかもしれない。いや、そもそも我々も最近、郵便を出したことがあっただろうか。

 10月1日から郵便料金が値上げされることになった。ハガキが63円から85円に、封書が84円から110円にと大幅な値上げになるが、「郵便なんて滅多に使わないので、値上げされても困らない」という声もある。請求書のやり取りもメールが主流になり、年賀状も出さなくなった人も多いだろう。利用者の郵便離れは加速度的に進んでいるといえる。

 コインなどと並んで“趣味の王様”といわれる切手のコレクターも、減少傾向にあるという。都内のあるベテランの切手商A氏はこう話す。

「1960年代は記念切手の発売日となれば郵便局に行列ができたものだし、80年代くらいまでも、子ども向けの漫画雑誌に切手の記事や切手屋の広告が載っていたくらい、趣味の王道だったんですよね。今ではもう、コレクターは高齢者ばかり。若い人には見向きもされない趣味になってしまいましたね」

コインのコレクターは増加中だが……

 一方、切手と一緒に語られることが多いコインは、コレクターが増加している。先日デイリー新潮で記事にしたが、コインは10代、子どものコレクターが増加中なのだ。アンティーク・コイン、特に金貨などは富裕層や投機目的の蒐集家も多いし、人気のあるコインはオークションで高額落札されることも多い。子どもから大人まで層が厚い影響で、市場が活況を呈している。

 コインの人気が高まっているのは、YouTuberなどのインフルエンサーが多いことや、富裕層向けに出版された作家の加治将一氏の著書『カネはアンティーク・コインにぶちこめ!』(祥伝社)などがヒットした影響が指摘されている。また、キャッシュレスは進んでいるとはいえ、現金は日常的に使うため、身近である。そして、今年7月の新札発行でブームに拍車がかかったといえよう。

 ところが切手は、10月1日の料金改定にあたり、9月2日から新しい普通切手の発売が始まったものの、注目されることがほとんどなかった。筆者の近所の郵便局に話を聞いても、発売初日に行列ができるといった動きはなかったという。発行開始日に各地の銀行に行列ができた新紙幣との差は歴然としている。切手商A氏はこう嘆く。

「郵便を使う人がそもそも減りましたから、切手に親しむ機会が激減した影響があるのでしょう。それに、昔の子どもたちは家に届く郵便物から切手を集めるのが楽しみだったのですが、最近では料金別納などで切手が貼られていないことが多い。なので、切手集めはやりにくいんですよ。そして、コインのようなインフルエンサーもいないのが、切手コレクターが増えない要因だと思います」

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