「親切心からの告げ口」だからこそタチが悪い…「薪をくべにくる人」はなぜ相手を不快にさせるのか

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下品なのでやめて

 放置できぬ悪口というのは、例えばかつて、芸人のスマイリーキクチ氏に対して書き込まれ、騒動となった「彼は足立区の女子高生コンクリ殺人事件の犯人」といったような、事実無根の誹謗中傷である。これを信用したテレビ局等、仕事の発注主は、キクチ氏への仕事のオファーを躊躇するだろうし、事務所はいちいち否定の説明をしなくてはならない。

 CMが決まっていたとしても「あなたの悪評が立っているから契約解除です」と広告主は言い出しかねない。誤解が解けたとしても、世間の一定数がこのデマを信じてしまった場合はCMキャラとしては使いづらいものである。

 さらには「〇〇氏は不倫をしている」などであっても〇〇氏の名誉を毀損するものになるし、家庭不和に繋がるのも目に見えている。こうした悪質なものは伝えるべき情報だろう。しかし、冒頭の松浦志穂の件については、いちいちその作家は伝える必要はなかった情報だ。

 私自身も署名記事を書いたり、著作も多数あったりするため、悪口は書かれる。中には知り合いが書き込んだと思われるものもある。これらが直接自分に宛てられた場合、見たくないのに見ることになり、しばしの間、嫌な気持ちになる。それだけでお腹いっぱいなのに、私が目に触れなくて済んだはずの、SNS上に書かれた悪口のスクショやURLは一切送ってきてほしくないのである。

 こちとらエゴサーチもしないし、「バカ」だの「低能」といった悪口には慣れているし、「まぁ、お前よりはいい人生送ってるけどな」と毎度思うのだから。

 とにかく、何の忠誠心を見せたいのか分からないが、告げ口をする行為というのは下品なのでやめた方がいい。特にネット上だけの知り合いで、会ったこともない人間からの密告ほど不快なものはない。生産性のない行為であることを理解していただきたい。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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